連載「ゴムの科学と技術のはなし ~文系と理系をつなぐゴム入門講座~」3
第1章『最初にぜひ知っておきたいゴムの常識』(その2)
ラバーインダストリー 2021-09-04
3 合成ゴムの種類とジエン結合の重要性
合成ゴムには概略、3つのジャンルがあると考えてよい。1つはジエン系ゴムと呼ばれるものであり、炭素(C)の連鎖で構成される主鎖中にジエン結合と呼ばれる2重結合を持つ高分子鎖からなるもの(ジエン系ゴム)であり、もう1つは主鎖に2重結合を持たない高分子鎖からなるもの(非ジエン系ゴム)である。さらに、主鎖が化学結合による架橋点ではなく物理的な凝集構造で結合されたものがあり、ウレタンゴムを含む熱可塑性ゴムである。これらをまとめたものが表2であり、今はざっと眺めていただきたい。

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表2に示した合成ゴムでは全体を4つの群に分類しているが、その60%近くの生産量を占める汎用ゴム(Ⅰ)群と30%を占める汎用ゴム(Ⅱ)群はほとんどの場合、硫黄架橋が採用されている。これらはすべてジエン系ゴムであり、したがって汎用ゴムと呼ばれるものはすべてジエン系ゴムである。
一方、特殊ゴム(Ⅰ)群は硫黄を用いないで過酸化物(パーオキサイド)による架橋を利用するものであり、非ジエン系ゴムである。さらに特殊ゴム(Ⅱ)群として架橋剤による化学架橋が存在しないゴム(ゴム状弾性体)がある。この場合、高分子鎖中に分子鎖の凝集部や結晶部が含まれており、それらが高分子鎖をつなぎとめる架橋点の役割を果たしている。ただしこのような凝集部による架橋(物理架橋)は架橋剤による化学架橋に比べて結合力が弱いために架橋部の滑りが起こりやすく、一般的にはゴムとしての反発弾性が低く耐熱温度も低い。
ゴム材料のほとんどの物性は高分子鎖の化学構造と架橋構造で決まると考えてよい。表2を見ると汎用の合成ゴムは主鎖にジエン結合(2重結合、C=C)を持つ高分子鎖が用いられている。これはその代表格である天然ゴムがジエン結合を持ち、かつ、それが優れた架橋効果を表す硫黄架橋(加硫)に適しているからである。高分子鎖中の2重結合というのは他の高エネルギー分子(ラジカル)と結合しやすいという特徴があり(後述参照)、ここに硫黄ラジカルが近づくとこれと結合し、高分子鎖を次々に繋ぎ合わせて網目状の架橋構造を形成する。
硫黄を用いた架橋法(加硫)は1839年にアメリカのグッドイヤーが偶然に発見したと言われており、これにイギリスのハンコックが大幅な改良を施し現在の加硫法の基礎が固まった。先に述べたようにゴム材料としてジエン系ゴム分子鎖が多用されるのはまさに硫黄との相性がよいからであり、さらに、硫黄架橋によって得られるゴム材料は他の架橋法によるものに比べて種々の物性バランスが優れているからである。
(次ページ:『4 物性を基準とした天然ゴムと合成ゴムの棲み分け』)
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