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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海主導の上昇は一服

連載 2017-09-18


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、9月6日に約3カ月ぶりの高値となる234.70円まで上昇したが、その後は230円の節目を挟んで押し目買いと戻り売りが交錯する不安定な展開になっている。出来高も再び落ち込んでおり、改めて方向性の把握が難しくなっている。

 上海ゴム相場主導の展開が続いていることは間違いないが、その上海ゴム相場の方向性も定まっていない。8月下旬の1トン=1万6,000元台での保ち合いを経て、9月6日には1万7,840元まで上昇したが、その後は再び1万6,000元台での取引に戻している。1万6,500元水準では投機筋の押し目買いが強まる傾向もみられるが、明確な底打ち感を形成するまでの勢いは見られない。

 天然ゴムの需給動向は殆ど材料視されていない。中国が資本規制を緩和する中、為替市場では人民元安圧力が発生しているが、人民元建てゴム相場に対しては殆ど影響が確認できていない。また、中国の8月鉱工業生産は前年比6.0%増と前月の6.4%から伸びが鈍化したが、こうした指標も特に材料視されていない。

 米国に相次いで大型ハリケーンが上陸したことを受けて、50万台を超えるとも言われる廃車が発生していることは、タイヤ需要環境に対してポジティブである。実際に、今後の新車販売増加を見込んで排ガス触媒に使われるパラジウム相場が急騰するような場面も観測されているが、ゴム相場は殆ど反応を示していない。需給環境に対する関心の低さが再確認できる状況にある。

 産地の集荷量は安定している。未燻製シート(USS)、RSSともに安定した集荷が行われている。適度の土壌水分が得られた状態が続いており、特に供給サイドに大きな問題は確認できない。ただ、産地相場も専ら上海ゴム相場の値動きと連動しており、産地需給動向は材料視されていない。15日にタイ、インドネシア、マレーシアの生産国会合が予定されており、そこで何か目新しい動きがみられるか否かが注目される程度である。

 上海ゴム相場の動向だけが注目されるが、その上海ゴム相場が中国マネーの投機だけに支配されている以上、今後も突発的な急伸、急落が繰り返される展開を想定しておく必要がある。他資産価格との相関、逆相関も見いだせず、完全な投機相場との割り切った視点で評価する必要がある。

 北朝鮮情勢を巡る評価から円相場も不安定化しているが、北朝鮮情勢の緊迫化で急激な円高が進行した局面でも、東京ゴム相場に対する影響は限定された。今後も上海ゴム相場の「写真相場」が続く可能性が高い。

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