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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の8月前半のレビューと8月後半のアウトルック

連載 2016-08-12

8月前半チャート

8月前半チャート


 

8月前半のレビュー

 8月前半のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1㎏=153.20円での取引開始後、150円台前半から中盤を中心に揉み合う展開になった。7月にみられた期近限月の急伸地合が一服する中、期先限月は総じて戻り売り優勢の展開になった。上海、シンガポール、産地相場などが値下がりしたことに加えて、為替が円高気味に推移する中、8月4日安値は150.30円に達している。ただ、期近限月の本格的な値崩れが回避されたことで、サヤバランスの観点から期先のみが大きく値崩れを起こすことは難しく、6月以降の上値が重いながら下げ渋る中途半端な相場展開が踏襲されている。

 TOCOMの当限は、7月限の190.00円(7月22日)でピークを確認し、8月限は180円水準まで値下がりしている。しかし8~10月限にかけては、なお受け渡しに対する懸念が残されており、大きな値崩れは回避されている。こうした中、期先限月の150円割れは当先の逆サヤ(期近高・期先安)が30円を突破することになり、期近限月のもう一段階の下げが見られなかったことが、期先限月の150円割れを阻止した。

 もっとも、上海やシンガポール相場は明確なダウントレンドを形成している。上海ゴム相場は、7月21日の1トン=1万1,650元をピークに、1万~1万500元のレンジまで値下がりしている。タイ産RSS3号のオファーも月初の1㎏=179セントに対して、170セントまで値下がりしている。産地集荷環境にも特に目立ったトラブルなどは報告されておらず、高値を維持しているのは東京ゴムの期近3限月のみという異常な状況になっている。

 

8月後半のアウトルック

 8月末に向けては、東京市場の期近限月をもう一段階押し下げることが可能か否かが焦点になる。当先の逆サヤが30円近くに達している以上、期先限月の150円割れ定着を促すには、当限の180円割れは必要不可欠であり、期近下げを伴わずに期先だけが下落しても、一時的な下押し局面に留まろう。

 引き続き、東京市場の期近限月は瞬間的な上昇リスクを想定しておく必要があるが、東京市場の期近限月以外の国際ゴム相場が軒並み急落地合を形成する中、円建てゴム相場のみが高値を維持し続けることを正当化することは一段と難しくなっている。期近限月の緩やかな下落と連動して、期先限月も改めて150円割れ定着を打診しよう。大きく値崩れを起こす状況にもないが、7月安値145.90円、年初来安値144.50円程度であれば、現実的なターゲットと考えている。

 一方、月末に向けては生産国の動向にも注目したい。現在、タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は、3月から6か月の期間で合計61万5,000トンの供給制限を行う市況対策を実施している。その期限が8月末で切れるため、改めてゴム相場を支援する国際協調の動きが広がる可能性も想定しておく必要がある。ただ、これまで導入してきた市況対策が有効に機能しない一方、今後は季節要因から増産傾向が本格化することになり、余程の大規模な市況対策が打ち出されない限りは、ゴム相場が160円台回復から更に一段高を試すようなリスクは限定されよう。

 上昇リスクとしては、引き続き天然ゴム需給よりも円安の可能性に注目している。8月26日にはジャクソンホールで開催される経済フォーラムでイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が予定されており、そこで早期の追加利上げを示唆するような動きがみられると、ドル高(円安)が円建てゴム相場を押し上げる可能性は残されている。

【レンジ】
8月前半の取引レンジ 150.30~157.60円
8月後半の予想レンジ 142.50~165.00円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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