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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の7月前半のレビューと7月後半のアウトルック

連載 2016-07-15

7月前半チャート

7月前半チャート


 

7月前半のレビュー

 7月前半のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1㎏=156.90円での取引開始後、イギリスの欧州連合(EU)離脱に絡んだ世界経済の先行き不透明感を嫌い、7月8日には145.90円まで値下りした。これは2月12日以来、約5か月ぶりの安値更新になる。しかし、年初来安値(144.50円)を前に下げ渋り、その後は株高と円安に支援される形で再び160円水準までリバウンドする展開になっている。結果的に、7月前半は6月の取引レンジを踏襲する方向性に乏しい値動きに留まった。

 グローバルな投資環境に目を向けると、7月前半は米国株が連日の過去最高値更新になるなど、投資家のリスク選好性が強くなった。商品市況も全般的にリバウンドを試す動きが優勢になったが、ゴム相場の値動きは限定されている。リスクオフ環境にあっては、中国人民元相場安が人民元建ての上海ゴム相場を押し上げたが、リスクオンの地合回帰で人民元安が一服する中、上海ゴム相場が改めて調整色を強めていることが嫌気されている。上海ゴム先物相場は、7月4日の1トン=1万1,875元をピークに、1万600元水準まで反落しており、株高や円安といった外部環境からの支援を考慮に入れても、TOCOMゴム相場が大きく上昇することは難しかった。

 タイ産RSSは6月末の1㎏=57.31バーツから56.99バーツまで小幅下落している。中央ゴム市場における集荷量は、未燻製シート(USS)も安定しており、特に産地で目立った供給障害などは報告されていない。6月下旬は安値是正の動きが目立ったが、専ら上海ゴム相場の反発に連動した値動きであったことが確認されている。
 
 

7月後半のアウトルック

 イギリスのEU離脱問題の先行き不透明感は根強く、今後も幾度かにわたって天然ゴム相場を下押しする展開が想定される。ただ足元では、1)6月米雇用統計が良好な内容になったこと、2)イギリスでメイ内相が首相に就任して政治リスクが後退していること、3)世界的な金融緩和圧力に対する期待感、4)日本の財政出動方針、5)低金利環境で高配当銘柄に対する物色意欲が強くなっていることなどが、リスクマーケットに対する資金還流を促している。こうした地合が維持されるのであれば、株高・円安がTOCOMゴム相場も下支えする見通し。

 しかし、天然ゴム需給面からの支援が得られない中での上昇圧力には限界があり、160円台からの上昇余地は引き続き限定されるとみている。中国の6月財新製造業PMIは前月の49.2から48.6まで低下し、4か月ぶりの低水準まで落ち込んでいる。また、6月貿易収支では、輸出が前年同月比4.8%減、輸入が同8.4%減となっており、輸出入ともに厳しい状態にあることが示されている。6月の新車販売台数は小型車減税の効果もあって前年同月比14.6%増と4か月連続で前年実績を上回っているが、中国経済に対する信認を取り戻すには至っていない。上海取引所在庫は6月24日時点の32万8,157トンに対して、7月8日時点では33万6,399トンまで増加し、過去最高を更新し続けている。株高・円安の支援が薄れれば、改めて150円の節目割れが打診されよう。なお年初来安値更新の可能性も十分にあると考えている。

 目先の反発シナリオとしてはラニーニャ現象による供給障害が警戒されていたが、日本の気象庁の最新の「エルニーニョ監視速報」では、「夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性はこれまでの予測に比べて小さくなり、ラニーニャ現象の発生が秋になる可能性も出てきた」と、発生時期の後ずれが予測されている。なお生産国が新たな市況対策の導入を検討するような値位置ではなく、TOCOMゴムの上昇力は株高・円安といった外部環境に強く依存する見通しである。

【レンジ】
7月前半の取引レンジ 145.90~164.00円
7月後半の予想レンジ 14450~170.00円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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