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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急激な円安で安値修正

連載 2025-10-13

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 OSE天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=295.80円まで値下がりして6月25日以来の安値を更新した後、310円水準まで切り返す展開になった。需要不安を背景に値下がりが続き、300円の節目割れを巡る攻防が繰り広げられた。しかし、10月4日の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利すると、週明け6日以降、為替市場で急激な円安圧力が発生し、もっぱら為替要因で円建てゴム相場は安値から切り返す展開になった。

 上海ゴム相場は10月1~8日が国慶節の連休となり、9日に取引が再開された。ただし、1トン=1万5,000元台前半と、連休前後で大きな値動きの変動はみられなかった。連休前は需要不安を織り込んでじり安の展開となっていたが、連休明けのタイミングでさらに大きく値を崩すことも、安値修正を進めることもなく、連休前の地合をほぼ踏襲した状態になっている。需要不安の安値低迷が続いているが、値動きは鈍かった。

 10月6日以降のゴム市場では、為替相場の動向が最大の価格変動要因になっている。10月4日、自民党総裁選が行われ、高市早苗氏が小泉進次郎氏を破り、第29代総裁に選出された。政権発足に向けた連立協議を行っており、20日以降に首相指名される見通しになっている。マーケットでは小泉氏の勝利を予想する向きが多かっただけに、高市氏の勝利はサプライズと受け止められている。

 高市氏は積極財政による景気の下支えを強く志向しているとみられるため、財政規律が緩むリスクが懸念されている。また、日本銀行の利上げにも否定的とみられることで、日本銀行の利上げ観測が後退している。この結果、積極財政期待で日経平均株価が連日の過去最高値更新となったことに加えて、為替市場では1ドル=147円台前半から152円台後半まで急激な円安・ドル高圧力が発生している。

 株高のゴム相場に対する影響は限定されたが、円相場の急落はゴムの輸入コスト引き上げに直結するため、ゴム相場の反発を促す原動力になった。10月3日と比較すると、9日時点で最大4.3%の円安に対して、ゴム相場は同3.9%の上昇となっている。290円台後半から310円水準までの急反発は、おおむね円安の影響のみで説明が可能な状態になっている。思惑先行の荒れた展開となっているが、さらに円安環境が続くか否かが注目されている。

 産地では、台風21号の影響で中国南部や東南アジアで豪雨が発生し、一部では洪水や土砂崩れなどの災害発生も報告されている。しかし、ゴムの生産・流通に対する影響は限定的とみられ、産地主導で値上がりを打診する展開は見送られている。

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