【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、需要不安で年初来安値更新
連載 2025-06-09
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=310~330円の取引レンジを下抜けし、一時280.00円まで急落して年初来安値を更新した。
中国自動車市場の混乱、産地が減産期から生産期への移行を進めていることなどが、嫌気された。株安、円高傾向もネガティブ。ただし、年初来安値更新後は直近高値から50円幅の急落地合になった反動もみられ、安値修正の動きで290円台まで切り返している。
上海ゴム先物相場は1トン=1万3,000元台前半から中盤まで下落し、2024年2月以来の安値を更新した。5月は一時1万5,000元台を回復していたが、改めて急落地合を形成している。
中国自動車市場の混乱が警戒されている。5月下旬に中国自動車大手BYDが22車種を最大34%、6月末まで値引きすると発表した。この動きに中国の他自動車メーカーも追随しており、中国新車販売市場が価格競争に突入した可能性が警戒されている。
中国自動車工業協会(CAAM)は「悪質な競争」に警鐘を鳴らし、中国工業情報化省も「不健全な競争を根絶する」として、監視体制を強化する方針を打ち出している。しかし、中国では消費環境の悪化に加えて、自動運転技術で大学生の死亡事故が発生した影響もあり、新車販売が伸び悩むメーカーも増えている。中国自動車市場の減速、混乱が警戒されていることが、中国自動車メーカーの株価急落を招いたが、その流れでゴム相場も急落している。ただし、6月入りしてからは自動車株の急落が一服するなど、徐々に落ち着きを取り戻しつつある。
通商環境は依然として先行き不透明感が強い。米政府は、米中両国首脳が電話会談する見通しを発表しているが、具体的な日程などは明らかにされていない(6月5日時点)。トランプ米大統領は、中国が重要鉱物資源の輸出規制を行っていると批判しており、実際に日米を含む各国で、レアアースの調達難から自動車生産の縮小・停止の動きが報告され始めている。また、トランプ大統領は鉄鋼とアルミの輸入関税を25%から50%まで引き上げたが、これも米自動車メーカーに大きなコスト負担を迫ることで、自動車市場の混乱に繋がるのではないかとの警戒感が強くなっている。
一方、産地は減産期から生産期への移行時期を迎えている。タイなどでは局地的な豪雨による農産物生産の混乱も報告されているが、全体的には供給量が増えやすい時期を迎えている。期近限月から大きく値を崩していくような動きはみられないが、季節的な供給増加見通しもゴム相場の上値を圧迫している。緩やかな逆サヤ(期近高・期先安)環境にある。
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