【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、昨年11月以来の安値更新
連載 2017-06-16
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=180円台前半まで続落し、2週連続で年初来安値を更新した。
前週に引き続き当限(6月限)がパニック的な急落相場になったこと、上海ゴム相場の上値の重さ、円高や原油安といった外部環境の悪さが嫌気され、昨年11月中旬以来の安値を更新している。
当限は5月下旬の300円台から200円台を割り込む急落地合になっている。5月限では受け渡し需給のひっ迫が警戒されていたが、6月限に関しては国内の入庫が増えているとの報告があることに加えて、産地が生産期入りで在庫を積み増していることで、逆に受け渡し需給の緩和が強く警戒されている。
ただ、すでに6月限と7月限のサヤはほぼフラット化しており、ここから更に当限が急落する必要性は薄れている。季節要因を考慮すれば、順サヤ(期近安・期先高)状態への転換までは求められておらず、ここから更に当限が急落するとオーバーシュート感が強まる見通しである。
一方、上海ゴム相場は1トン=1万2,000元台中盤で方向性を欠いている。年初来安値の更新サイクルは維持されているが、ボックス気味の展開になっている。中国当局が金融引き締め圧力を緩めている模様であり、流動性環境の改善が報告されていることが、急落リスクを後退させている。依然として中国コモディティ市場に対して本格的な資金流入が再開される状況にはないが、他コモディティ相場も下げ一服となっており、上海主導の急落リスクは後退している。
産地では平年と比較して乾季から雨季への移行がスムーズに進んでおり、天然ゴムに限らず、コメやパーム油などの良好な生産環境が報告されている。ただ、タイ中央ゴム市場では集荷量の落ち込みが報告されており、消費地相場の動向と関係なく下げ渋りの兆候が見受けられる。天然ゴム相場の低迷に農家が抗議するような動きまでは確認できないが、RSSの現物相場は1キロ=60バーツ台を割り込んでおり、コスト論の視点での下げ止まりシナリオにも注意が要求される時間帯になっている。
基調としては、天然ゴム相場の底入れには慎重スタンスが求められる。中国当局が資産バブル抑制を至上命題としている以上、投機マネーが再びゴム市場に流入する可能性は低い。一方で、中国流動性環境の改善、産地集荷量の減少といったポジティブ材料も浮上しており、従来よりも自律反発のリスクが高まっていることに対しては、警戒レベルを引き上げる必要性がある。
(マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)
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