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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、通商環境の不安定化で急落

連載 2025-04-07

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=350円台で上げ一服となり、330円台前半まで急反落する展開になった。急落が一服した後の安値修正が進んでいたが、改めて通商リスクを織り込む動きが優勢になり、大きく値を崩している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万6,000元台前半まで急落し、2024年9月6日以来の安値を更新した。

 トランプ米大統領は4月2日、相互関税を発表した。中国34%、欧州連合(EU)20%、日本24%、韓国25%など、主要貿易相手国に対して高めの関税を発動している。特に中国に対してはすでに発動済の20%に上乗せされるため、合計54%もの関税が課せられることになる。

 これによって米中貿易は事実上ゼロになる可能性があり、その他の国も米国との貿易に大きな混乱が生じるのは必至である。すでに中国商務省は報復を表明しているが、これから米国と世界各国が報復関税の応酬に向かうことで、世界経済が急減速するリスクが織り込まれている。今後、何らかのディール(交渉)が成立して関税の取り下げ、大幅な縮小に向かう可能性もあるが、不透明な先行きへの対応が優先されている。世界の株式相場、原油などの資源価格は急落し、その流れでゴム相場も急落している。

 今後、トランプ政権はセクター別関税にも踏み込む見通しで、世界経済の減速懸念を織り込む動きがマーケット全体に広がりをみせるか否か注目される地合になっている。

 中国の3月製造業PMIは、国家統計局発表で前月の50.2に対して50.5、財新発表で同50.8に対して51.2になっている。中国政府の景気刺激策の効果もあって、足元の経済活動には一定の底固さが確認できることはポジティブ。

 供給サイドは減産期のピークに加えて、タイなどでは春の供給も報告されている。しかし、供給リスクのプレミアムを加算していくような動きはみられない。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、4月3日時点で前週比2.8%安の71.71バーツとなっている。もっぱら消費地相場と連動した値動きが続いており、供給リスクよりも需要リスクの評価が重視される地合になっている。

 JPXゴム先物のサヤは、フラットから若干の順サヤ(期近安・期先高)。当限は2024年8月15日以来の安値を更新している。

 為替が円高に振れていることも、円建てゴム相場にはネガティブ。3月28日の1ドル=151.21円をピークに、4月3日には146.68円まで円高・ドル安に振れた。リスクオフ環境や米長短金利低下を受けて、ドル安と円高が同時進行していることも、円建てゴム相場を下押しした。

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