【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海堅調も、調整売り優勢
連載 2025-02-17
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=360円台中盤まで値下がりし、1月9日以来の安値を更新した。上海ゴム相場はほぼ横ばいでの推移になっているが、JPXゴム相場は2月3日の394.90円をピークとした調整圧力が強く、大きく値を崩した。特にJPXゴム相場のみが値を崩すような明確な理由は見当たらなかったが、1月の堅調地合に対する反動安局面になった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万7,000元台中盤から後半でやや底固く推移した。トランプ米政権の通商政策に対して高いレベルの警戒感がみられるも、上海ゴム相場は逆に年初来高値を更新する堅調地合になった。
米国は2月4日に中国から輸入品に対して10%の関税を課し、中国は10日から米国産石炭や液化天然ガス(LNG)などの輸入に10~15%の報復関税を課している。米中通商環境の悪化はゴム需要の先行き不透明感を高めることになる。
しかし、マーケットでは中国政府の対応は抑制されているとのポジティブな評価が優勢になっている。中国政府がどのような戦略を持っているのかは不明だが、既に低迷している景気への影響を最小限に留めるため、本格的な貿易紛争を望んでいないとの見方が強くなっている。ゴム相場に限らず、鉄鉱石や非鉄金属相場なども、通商リスクを警戒しつつも底固さを維持していることはポジティブ。
また、中国では春節(旧正月)の連休が終わり、工場の稼働が本格化していることもポジティブ材料視されている。毎年みられる季節傾向だが、経済活動が正常化しつつあることも、ゴムを含む資源価格全体を下支えしている。
ただし、通商問題については、依然として先行きの見通しが立たない状況にある。トランプ米大統領は鉄鋼とアルミの輸入に対して25%の関税措置を発表し、さらに多くの国に対する「相互関税」の発動も示唆している。このため、マーケット環境全体が不安定化しているが、株式相場も含めて極端なリスクオフ化は回避されている。
こうした状況下で、なぜJPXゴム相場のみが急落したのかは不明だが、12日に360.30円まで値下がりした直後、13日には381.50円まで一気に20円超の切り返しを見せるなど、極端に投機色が強い不安定な値動きになっている。
為替相場が円高から一転して円安に振れたことはポジティブ。1ドル=150.93円から154円水準まで切り返している。円高要因の値下がり圧力は一服した。
産地ではウインタリング(落葉期)の減産シーズンに突入しているが、供給リスクを手掛かりにゴム相場を押し上げていくような動きは限定された。
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