【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国リスク軽減でじり高
連載 2024-12-09
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=370円台前半まで値上がりする展開になった。上海ゴム相場が底固く推移したことが好感されている。為替が円高気味に推移したことが上げ幅を限定したが、11月8日以来の高値を更新した。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万8,000元台後半まで値上がりしている。11月下旬には中国経済の減速懸念、トランプ米次期政権での貿易紛争に対する警戒感から1万7,000元台前半まで下落していたが、反発フェーズに移行している。
中国経済に対する信頼感が高まっている。中国の11月製造業PMIは前月の50.1から50.3まで上昇している。3カ月連続の改善であり、活動の拡大を意味する50ポイント超えは2カ月連続になる。8月には49.1まで低下していたが、その後は金融緩和などの景気刺激策が展開されたことで、短期産業サイクルが改善しているとの評価が、上海ゴム相場を押し上げている。
加えて、12月11日から2日間の日程で中央経済工作会議が開催されると報じられている。習近平国家主席を含む最高幹部が参加し、来年の経済目標や景気下支え策などについて議論が行われる見通し。直ちに大規模な景気対策の発表などは行われない見通しだが、中国経済リスクを織り込む必要性が薄れていることが、上海ゴム相場を押し上げている。
また、東南アジアから中国南部にかけての豪雨に対する警戒感が蒸し返され始めていることにも注意が必要。中国南部の天然ゴム生産地である雲南省などでも洪水被害の発生が報告されている。コーヒーやパーム油など他の農産物市場でも、豪雨による供給リスクが意識され始めている。本来だと乾季に向かって降水量が減少傾向を強める時期になるが、季節外れの豪雨が続くと、供給リスクの織り込みを迫られる可能性にも注意が必要な状況になっている。
ただし、最近の上昇はもっぱら期先限月が中心であり、当限に対して加算されているプレミアムを大きく引き上げていくような動きは確認できていない。逆サヤ(期近高・期先安)環境は維持されているが、投機色の強い値動きになっている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、12月3日時点で1キロ=75.86バーツ。11月末の76.90バーツから下振れしているが、産地相場は不規則な値動きが目立つ。4~5日は未入電になっている。
一方、為替相場は円高傾向を強めており、1ドル=150円の節目を一時割り込んでいる。改めて日米金融政策環境の違いが注目を集めており、10月11日以来の円高・ドル安になったことが、円建てゴム相場の上げ幅を限定した。
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