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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導で1カ月ぶり安値

連載 2024-11-04

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=350円台後半まで下落し、9月24日以来の安値を更新する展開になった。上海ゴム相場は動意を欠く展開が続いているが、産地相場の軟化を手掛りに、売り優勢の展開になった。為替は円安気味に推移したが、週を通じて上値の重さが目立った。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台後半でやや上値の重い展開になった。1万8,000元割れの取引時間が増えたが、大きく値を崩すには至らず、最近のボックス相場が踏襲されている。

 中国経済の評価が定まらず、資源価格全体が方向性を欠いている。11月4~8日に中国全国人民代表大会(全人代)の常務委員会が開催され、景気下支え策についての協議が行われるとみられている。このため、様子見ムードの強さが目立った。

 欧州委員会は10月29日、中国製電気自動車(EV)に対する追加関税の導入を正式に決定した。30日に適用が開始され、今後5年にわたり従来の10%に対して最大45.3%の関税が課せられる。中国の自動車生産、更にはタイヤ需要にも影響が生じるとみられるが、上海ゴム相場の反応は限定された。

 一方、産地相場は10月入りしてから値下がりが続いている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)の現物相場は、10月31日時点でUSSが前週比7.7%安の1キロ=69.42バーツ、ラテックスが同6.1%安の69.00バーツとなっている。

 産地では依然として豪雨が続いているが、ゴム供給は最悪の状態を脱しつつあると評価されている。例年だと11月に入ると降水量が更に落ち込む傾向がみられる影響もあり、8月から続いていた供給不安の織り込みが一服している。

 上海ゴム相場は高止まりしているが、JPXゴム相場は10月25日に10月限の受渡が終了して以降、急落地合に転じている。10月限の受渡価格は410.00円と9月限の391.70円を大きく上回り、2011年4月限以来の高値になっている。しかし、新たに当限になった11月限は10月31日終値で361.10円まで値下がりしており、供給不安のピークは10月限だったとの見方を反映した値動きになっている。

 このまま産地天候、そして気象環境が安定に向かうのかは不確実性を残しているが、期近限月に加算されていたプレミアムは急速に解消され、急激な逆サヤも是正されている。概ねサヤがフット化していることも、産地天候不順を手掛りとした上昇相場が一服したことを強く示唆している。

 このまま産地主導で更に値を崩していくのか、9月5日安値345.30円水準で下げ一服となるのかが注目される。

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