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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地天候不順で上値追い

連載 2024-05-20

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=320円台まで値上がりする展開になった。値下がり傾向が続いていた産地相場が反発し、それに連動して消費地相場も値上がりしている。改めて東南アジアの天候不順のリスクプレミアムが加算されており、4月12日以来の高値を更新した。為替相場が乱高下しているが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台中盤まで値上がりした。1万4,000元台前半で揉み合う展開が続いていたが、産地相場連動で安値修正が進んでいる。4月15日以来の高値を更新した。

 この時期は減産期から生産期への移行が促されることで、5月入り後のゴム相場は上値の重さが目立っていた。徐々に集荷量が増加するとの楽観的な見方が、産地相場主導で消費地相場も圧迫していた。しかし、5月中旬は改めて産地天候不順のリスクプレミアムを加算する動きが優勢になった。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、5月16日時点で前週比5.8%高の1キロ=80.60バーツとなっている。5月7日には75.49バーツまで値下がりしていたが、そこから一気に切り返した。

 東南アジアでは4月から記録的な熱波が観測されていたが、ゴム相場の反応は限定的。足元の天候不順による供給不安よりも、減産期明けの季節傾向の方が重視されていた結果である。しかし、5月中旬は産地相場で改めて天候リスクのプレミアム加算を進める動きがみられ、それが消費地相場も押し上げている。

 4月から東南アジア各地では最高気温が40度を超える地域が報告されていたが、5月に入っても大きな変化はみられない。タイ保健省は屋外での長時間にわたる活動を抑制することを呼び掛けるなど、多数の死亡事例を含む健康被害も報告されている。この結果、5月に入ってもタイ中央ゴム市場の集荷量は低迷状態が続いており、リスクプレミアムの加算が再開されている。このまま天候リスクの織り込みを進めるのか、気象環境が安定して集荷量が増加に転じるのかが焦点になる。

 コモディティ市場全体を見渡すと、引き続き中国経済に対する信頼感の回復を背景に、非鉄金属相場は底固く推移している。また、原油相場は夏の需給ひっ迫リスクに下値を支えられている。しかし、ゴム市場においてはこうした他素材市況の堅調地合はあまり材料視されておらず、もっぱら天候リスクの織り込みに終始している。ただし、消費国の在庫水準は依然として潤沢で、深刻な需給ひっ迫環境には陥っていない。天然ゴム先物市場でも当限に大きなプレミアムを加算するような動きは見送られた。

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