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【マーケットアナリティクス】

2024年のゴム相場を見通す、2024年は上値重い展開へ

連載 2024-01-09

 2024年の天然ゴム相場は、世界経済成長が抑制される中で、価格に対して下振れ圧力が強まりやすい環境が想定される。需要環境は厳しさを増し、需要を満たす安定供給が実現する可能性が高い。また、為替相場が円高方向に振れるリスクの高まりも、円建てゴム相場の上値を圧迫しよう。ただし、グローバルな異常気象が頻発する傾向には変化がみられず、生産障害の発生を上振れリスクとしてみておきたい。2023年の平均価格223円(レンジ194~277円)に対して、2024年は平均価格200円(レンジ180~270円)を想定したい。

2023年は前半低迷、後半高騰

 2023年の天然ゴム相場を振り返ると、8月を挟んでマーケット環境は一変した。1~7月期は、世界経済(特に中国経済)の減速が嫌気され、上値の重い展開が目立った。年初の1キロ=218.90円に対して8月16日には194.00円まで値下がりした。

 一方、9月以降は産地天候不順と低在庫環境の組み合わせが、高騰相場を促した。10月19日に年間高値となる276.90円まで急伸した。異常気象「エルニーニョ」現象が発生し、その影響で東南アジアでは豪雨や洪水などの天候災害が深刻化した。しかも、国内営業倉庫在庫の取り崩しが進んでいたため、8月下旬から11月下旬にかけては瞬間的な急騰が繰り返される展開になった。為替が年初の1ドル=130円台から一時151円台後半までの円安・ドル高になった影響も大きかった。

経済成長鈍化の余波を想定

 2024年の世界経済は低成長が続く見通しになっている。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済成長率は2022年の3.5%が2023年に3.0%まで鈍化したが、2024年は2.9%が想定されている。2023年は世界各国がインフレ抑制のために強力な政策引き締めを行ったため、その影響が顕在化していくとみられる。2000~2019年の平均である3.8%を大きく下回る低成長に留まることで、ゴム需要も過去と比較して抑制された状態が続く可能性が高い。

 最大市場である中国は、2023年の5.0%から2024年に4.2%までの鈍化が見込まれている。中国汽車工業協会(CAAM)は、2024年の同国新車販売台数が前年比3%増の3,100万台に留まるとの見通しを示している。2023年は推定11.7%増となっているが、大きな鈍化予想になる。CAAMは、需要縮小と供給問題、さらに景気期待後退を受けて、2024年は「困難に直面する」との厳しい見方を示している。こうした2024年の市場減速見通しは、米国、欧州、日本など他の主要市場も共有している。このため、少なくとも新車用タイヤ需要の大幅な伸びは想定できない。

 買替用タイヤ市場に関しては、景気減速と高インフレで乗用車、商用車ともに2023年と同様に抑制された需要環境が続く可能性が高い。

 上振れするリスク要因としては、世界各国の利下げが急ピッチに進むと、想定以上に景気が上振れする可能性がある。

 一方、自動車生産のサプライチェーンは依然として脆弱であり、供給問題が深刻化すると、景気動向に関係なく需要が抑制される可能性がある。ここ数年は半導体不足が自動車生産を抑制しているが、電池の供給を巡る不確実性もクローズアップされている。電池用の鉱物資源については戦略物資化しているため、自動車生産トラブルを促すリスクとしては注意が求められる。

エルニーニョ現象の行方に注意

 一方、供給環境は異常気象の影響を受けるか否かに強く依存する。2023年はエルニーニョ現象が東南アジアで豪雨や供給被害をもたらし、ゴムの生産はもちろん、流通面でも大きな混乱が生じた。2023年末時点でもエルニーニョ現象は続いているが、気象庁によると2024年春まで続く可能性が50%とされている。

 エルニーニョ現象が春以降も続いた場合には、海水温度の上昇が熱帯低気圧やモンスーンの発生確率を高めることになる。2023年は年間平均気温が記録上最高との報告が目立つが、ゴムは農地で生産されているだけに、異常気象の発生には脆弱な供給環境にある。

 ただし、異常気象の発生がなければ、パンデミックによる混乱の収束、肥料価格の鎮静化もあって、安定供給が見込まれている。2023年はココア、コーヒー、サトウキビ、果物などが不作だった一方、とうもろこしや小麦、大豆などの穀物は豊作だった。豊作・不作のブレ幅が大きくなりやすくなっている。

 天候リスクに絡んで注意が必要なのは、国内在庫水準が抑制されていることだ。JPX発表の生ゴム指定倉庫在庫は、2022年末の5,167トンが2023年5月に1万2,689トンまで増加した。しかし、11月末には3,195トンまで急減しており、産地で天候リスクが高まると供給不安から急伸するリスクが高めの状態にある。

 ゴム需給以外では、為替環境に対して注意が必要である。2023年は最大で15.9%もの円安・ドル高圧力が発生したことが、円建てゴム相場をサポートした。しかし、2024年は米国が利下げ、日本がマイナス金利解除を行う可能性が高く、円高・ドル安傾向が強まると価格下振れリスクになろう。

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