【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地軟化も、やや底固い
連載 2023-11-13
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=260円台前半まで小幅上昇する展開になった。薄商いの持高調整が中心のボックス相場が続いているが、250円台での保ち合い相場を経て、小幅値位置を切り上げた。株高や円安を手掛かりに買いを入れる動きがみられた。原油相場は大きく値を崩したが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台前半でほぼ横ばいの展開になった。中国政府の景気刺激策に対する期待感が下値を支えるが、中国経済の減速懸念も強く、明確な方向性を打ち出せなかった。
中国の10月貿易統計によると、輸出が前年同月比6.4%減(前月は6.2%減)、輸入が同3.0%増(同6.2%減)となった。輸出環境の悪化が続いていることは、グローバル経済の減速傾向が強くなっていることを示唆している。一方、輸入が12カ月ぶりに増加に転じたことは、政策支援で中国内需が回復に向かっている可能性を示唆している。このため、マーケットでは強弱評価が割れており、上海ゴム相場は明確な方向性を打ち出せなかった。
中国政府の景気対策、そして中国人民銀行(中央銀行)の金融緩和期待から、鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場などは底固さをみせている。このため上海ゴム相場も底固さをみせたが、上値の重さを解消していくまでの勢いはみられなかった。
一方、原油相場は急落が続いている。WTI原油先物相場は9月に1バレル=95ドルを突破していたが、80ドルに続いて75ドルも下抜く展開になった。特に目立った新規売買材料は見当たらなかったが、漠然とした需要不安の織り込みが続いている。ただし、原油以外の産業用素材市況は大きく値を崩しているわけではなく、ゴム相場は総じて冷静な対応をみせた。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、11月9日時点で前週比2.5%安の1キロ=54.50バーツ。タイでは引き続き豪雨や洪水被害も報告されているが、産地相場に供給リスクのプレミアムを加算していくような動きはみられない。10月と比較すると産地気象環境が安定していることもあり、相場環境の鎮静化が促されている。
ただし、JPXゴム市場では当限が250円台から280円水準まで急伸するなど、一部限月で不規則な値動きもみられる。国内の低在庫環境には変化が生じていないため、10月限に続いて11月限の急伸がみられるのか注意が必要な状況になっている。
一方、米利上げ終了観測で米長期金利が大きく低下したが、円安環境が維持されていることは円建てゴム相場に対してポジティブ。
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