PAGE TOP

【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国景気対策期待で反発

連載 2023-08-28

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤まで切り返し、約2カ月ぶりの高値を更新する展開になった。中国経済の減速懸念を背景に7、8月は年初来安値の更新が続き、8月16日安値は194.00円に達していた。しかし、その後は中国政府の景気対策期待などを手掛かりに安値修正の動きが強まり、200円の節目回復から一段高になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台に乗せ、中心限月ベースでは2月1日以来の高値を更新している。

 中国経済の減速懸念は強く、中国株式や原油相場などは上値を圧迫される展開が続いている。特に上海株式相場は年初来安値を更新しており、8月下旬の地合は急激に悪化している。しかし、ゴム市場では中国政府が近く景気刺激策を打ち出すとの期待感から、安値修正の動きが促されている。

 これと同様の値動きは非鉄金属や鉄鉱石、石炭相場などでも観測されており、中国経済の減速(=資源需要鈍化)圧力の織り込みが一服している。

 これまでのパターンだと、中国政府の政策は小出しにとどまる傾向が強く、期待が失望に変わる形でゴム相場は徐々に値位置を切り下げる展開を繰り返してきた。このため、今回も中国経済に対する信頼感を回復するのは難しいとの悲観的な見方も根強いが、一旦は景気対策期待で安値修正を進める動きが優勢になっている。今後は中国政府が期待を裏付けるような大規模な景気対策を打ち出すのか、マーケットに失望感を広げるような小規模な景気対策にとどまるのかが焦点になる。

 また、8月24~26日には米・ジャクソンホールで経済フォーラムが開催され、各国中央銀行の金融政策スタンスについて多くの情報が得られる見通しになっている。8月は米国の高金利政策が長期化するとの観測が米長期金利の上昇、株安を促しているだけに、特に25日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がどのような発言を行うのかによって、月末に向けてのゴム相場の値動きも不安定化する可能性がある。

 供給サイドには、特に目を引くような売買材料は見当たらない。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)の現物相場は、8月24日時点でUSSが前週比2.0%高の1キロ=44.15バーツ、RSSが同1.9%高の46.89バーツ。急ピッチな値上がりが観測されたが、もっぱら消費地相場の上昇と連動した値動きになっている。産地の豪雨や洪水に対する懸念の声も聞かれるが、供給リスクを織り込むような値動きにはなっていない。JPXゴム先物相場でも期近限月に対してプレミアムを加算していくような動きは確認できなかった。

関連記事

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物