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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、3週連続の年初来安値更新

連載 2023-08-07

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円の節目を割り込み、190円台中盤まで下落した。3週連続で年初来安値を更新する展開になっている。為替相場は円安に振れたが、根強い需要不安が上値を圧迫しており、ダウントレンドが維持されている。日経平均株価の下げもネガティブ材料視された。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万2,000元台前半での保ち合いを経て、1万1,000元台後半まで下落する展開になった。中国経済環境に対する不信感が根強く、上値を抑えられる展開が続いている。

 7月31日に発表された7月製造業PMIは前月の49.0から49.3まで小幅上昇したが、4カ月連続で活動の縮小を意味する50割れになっている。また、8月1日に発表された7月財新製造業PMIは前月の50.5から49.2まで低下している。中国経済に対する信頼感の低さが、上海ゴム相場の上値を圧迫する展開が続いている。

 ただし、中国共産党中央政治局は7月24日、マクロ経済政策の調整を強化して内需拡大に注力する方針を示している。このため、中国政府の景気対策期待の下値サポートもみられ、大きく値を崩していくまでの勢いはみられなかった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場(ソンクラ)は、8月3日時点でUSSが前週比0.8%安の1キロ=44.20バーツ、RSSが同1.6%安の45.50バーツ。産地相場も安値低迷状態が続いている。

 タイでは豪雨や洪水被害の報告もあるが、産地相場を大きく押し上げるような動きには至っていない。異常気象「エルニーニョ現象」の発生で東南アジアの気象環境は不安定化しやすい状況にあるが、ゴムに関しては潜在的なリスク要因との評価に留まっている。

 消費地相場が需要不安に上値を圧迫される展開になっているのに対して、産地相場が下値をサポートするような動きは確認できていない。

 一方、8月入りしてからは日経平均株価が高値から大きく下押しされたこともネガティブ材料視されている。米格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債の格付けを「AAA」から「AA+」に一段階引き下げたこと、日本の長期金利の上昇傾向が強くなっていることなどが、投資家のリスク選好性を後退させている。パニック的なリスクオフ圧力には発展していないが、コモディティ市場でも持高調整の動きが観測されており、ゴム相場も上値を圧迫される展開になった。

 為替市場で円安圧力が強くなっていることは、円建てゴム相場に対してポジティブ。7月28日には1ドル=138.05円まで円高・ドル安が進行していたが、8月3日には143.89円までの円安・ドル高になっている。

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