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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値を更新

連載 2023-07-24

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台前半まで値下がりする展開になった。7月19日安値は200.00円となり、今年の最安値を更新している。これまでは3月22日の201.90円が年初来安値だったが、4カ月ぶりに下値を切り下げる展開になっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半まで下落する展開になった。前週は1万2,000元台中盤で揉み合う展開が続いていたが、改めて中国経済の減速懸念を織り込む動きが優勢になっている。

 7月17日に中国の4~6月期国内総生産(GDP)が発表されたが、前年同期比年率6.3%増となった。2022年に上海市などでロックダウンが行われていた反動で大きく伸びているが、市場予測の7.1%増を完全に下回っている。マーケットの想定以上に4~6月期の中国経済が厳しい環境にあったことが再確認できる状況にある。

 これを受けて、大手金融機関は軒並み2023年の中国経済成長率見通しを引き下げており、ゴム相場も非鉄金属や中国株などと同様に上値の重い展開になった。

 ここで注目されたのが、中国政府が本格的な景気対策に乗り出すかだった。中国政府の経済成長目標「5%前後」の達成に不透明感が強まる中、マーケットでも大規模な財政出動や金融緩和によって、景気を下支えする動きを見せるのではないかとの期待感も浮上している。実際に中国国家発展改革委員会(NDRC)は7月18日、消費を回復・拡大するための施策を導入すると表明している。

 しかし、中国では地方政府の債務問題が深刻化しており、大規模な財政出動は難しいのではないかとの慎重な見方が、ゴム相場の年初来安値更新に直結した。

 供給サイドでは、特に大きな問題は報告されていない。異常気象「エルニーニョ現象」の発生を受けて、世界各地で高温や乾燥傾向が報告されている。東南アジアでも乾燥傾向が強くなっているが、現時点ではゴムの集荷量に大きなダメージを与えるような動きは観測されていない。産地相場主導で安値修正を進めるような動きも見られず、逆に消費地相場の上値の重さと連動した値動きになっている。

 為替市場では急激な円高圧力が一服し、為替要因で値を崩す必要性は薄れている。7月25~26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、7月27~28日に日本銀行金融政策決定会合を控えているため、7月末に向けて為替要因で荒れた展開を迫られるリスクもあるが、足元では急激な円高圧力が一服したことはポジティブ。ただし、中国などの需要不安を背景とした値下がり圧力を相殺するほどのインパクトはなかった。

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