【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、急激な円高でも小動きに
連載 2023-07-17
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤で揉み合う展開が続いた。世界経済の減速懸念、産地相場の低迷が上値を圧迫する展開が続いている。日経平均株価の軟化や円高もネガティブ。ただし、一気に200円の節目割れを打診するような動きはみられず、総じて狭いレンジでの保ち合い相場に留まった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半をコアに揉み合う展開になった。中国経済の減速懸念が上値を圧迫する一方、政府の景気対策期待が下値を支え、明確な方向性を打ち出せていない。短期筋の持高調整が中心の展開になった。強弱評価が定まらず、決め手を欠いている。中国経済の減速懸念は根強い。各種経済指標は製造業に留まらずサービス業も停滞傾向を強めていることを示唆している。一方で、中国政府がボトルネック化した不動産市場などを対象とした景気刺激策を打ち出すとの観測もあり、週を通じて売買が交錯する不安定な地合になった。
特に新たな売買テーマも見当たらなかったことで、薄商いの持高調整に終始しており、決定打を欠いている。改めて中国経済などの減速懸念を織り込むのか、それとも中国政府の景気対策期待を織り込むのか、投資家マインドに強く依存する投機色が強い相場環境になっている。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、7月13日時点でUSSが前週比0.6%安の1キロ=46.00バーツ、RSSが0.1%高の47.47バーツ。安定した集荷環境が上値を圧迫するが、産地相場は前週に続いて横這い気味の展開になり、明確な方向性を打ち出せていない。
異常気象「エルニーニョ現象」の影響で世界の天候は不安定化しており、平均気温は過去最高を更新するなど全体的に高温傾向が強くなっている。東南アジアにおいても、タイ気象庁が雨季が始まっているにもかかわらず少雨傾向が強く、秋にかけて水不足が深刻化する可能性を警告している。関係部局に対して対応を呼び掛けているが、7月上旬時点では天然ゴム生産に現実の障害が発生している訳ではなく、供給リスクのプレミアムを相場に加算していくような動きは見られなかった。一部の農産物相場がエルニーニョ現象に反応しているが、天然ゴムに関してはあくまでも供給「リスク」との評価に留まっている。
一方、為替市場では急激な円高圧力が発生している。1ドル=145円水準から13日には138円台中盤まで円高・ドル安が進行している。現在のドル建てのゴム相場水準だと、1円の円高で理論上はJPXゴム相場に対して1.5円程度の値下がり要因になる。このため上値は重かったが、値崩れを進めるまでには至らなかった。
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