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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、株高・円安も膠着が続く

連載 2023-06-19

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円水準でやや上値の重い展開になった。上海ゴム相場の上昇が一服したことで、6月8日の215.30円で上げ一服となり、調整売り優勢の展開になった。しかし、逆に大きく売り込むような動きはみられず、ボックス気味の相場展開が維持されている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元の節目を挟んで売買が交錯した。1万2,000元台で戻りを売られる一方、1万1,000元台後半で押し目を買い拾われ、決定打を欠いている。

 中国人民銀行(中央銀行)は、市中銀行向けに1年間の短期資金を融通する場合の金利を従来の年2.75%から同2.65%まで引き下げた。これを受けて、次は最優遇貸出金利(LPR)の引き下げが行われるとの観測、さらに政府の景気刺激を打ち出すとの期待感が強くなっていることはポジティブ。しかし、中国の5月小売売上高は前年同月比12.7%増(前月は18.4%増)、5月鉱工業生産は同3.5%増(同5.6%増)と景気減速を示す経済指標の発表が続いており、上海ゴム相場は明確な方向性を打ち出せない展開が続いている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、6月15日時点でRSSが前週比1.8%安の1キロ=49.68バーツ。上海ゴム相場の上値が圧迫される中、産地相場も上値を抑えられた。

 日本の気象庁は6月9日、「エルニーニョ現象が発生しているとみられる」、「今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)」との報告を行っている。一般的にエルニーニョ現象が発生すると、東南アジアでは高温・乾燥傾向が強まるため、天然ゴムを含む農産物生産に障害が発生するリスクを高める。実際に6月入りしてからはコーヒーや砂糖相場などが供給不安から不安定な値動きを迫られている。しかし、ゴム相場に関しては膠着気味の相場展開が維持されている。短期的にはモンスーンによる豪雨や洪水発生のリスクも警戒されるが、こうした天候リスクに対しても目立った反応を示していない。需要サイドと同様に供給サイドの動向に関しても強弱評価が定まっていない。

 日経平均株価は連日、バブル崩壊後の最高値を更新している。投資家のリスク選好性は高まっている。また、為替市場では2022年11月以来の円安・ドル高環境になっている。円建てゴム相場は為替要因だと上昇しやすい環境になっている。一方、原油相場は大きく値を崩しており、今年最安値圏に留まっている。しかし、こうした外部環境主導の売買も見送られている。出来高も低迷状態が続いており、約3カ月にわたって上下双方に明確な方向性を打ち出せない展開が続いている。

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