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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導で小幅高

連載 2023-06-12

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円台前半まで小幅上昇する展開になった。210円の節目を挟んで売買が交錯する膠着状態が続いていたが、上海ゴム相場が若干押し目買い優勢の展開になったことで、JPXゴム相場も小幅値上がりした。ただ、3月下旬以降のボックス内での値動きに留まっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半まで小幅上昇する展開になった。中国経済の減速に対して根強い警戒感があるものの、人民元相場が対ドルで約6カ月ぶりの安値を更新したことで、主に為替要因から地合を引き締めた。また、米中当局者の対話が行われていることで両国の経済対立が緩和するとの期待感、中国政府が年後半にも景気対策を打ち出すとの観測も上海ゴム相場の下支え要因になった模様だ。

 一方、中国経済の減速懸念が、引き続き上値圧迫要因になっている。6月7日に5月の貿易収支が発表されたが、輸出が前年同月比7.5%減(前月は8.5%増)、輸入が同4.5%減(同7.9%減)となった。国内外の需要低迷が続く中、主に製造業部門で生産活動が抑制されており、輸出と輸入の双方が抑制されている。特に輸出の想定外の大幅な落ち込みは、世界経済がマーケットの想定以上に急減速しているのではないかとの警戒感を高め、ゴム相場の上昇余地を限定した。

 日経平均株価は連日のようにバブル崩壊後の最高値を更新したが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。また、6月4日の石油輸出国機構(OPEC)プラス会合で減産期間の延長、サウジアラビアの7月単独減産が決まったことで、一時的に原油相場が急伸したが、ゴム相場に対する押し上げ効果はほとんど見られなかった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、6月8日時点でUSSが前週比1.4%安の1キロ=47.05バーツ、RSSが同0.9%高の50.59バーツ。5月下旬以降は集荷量が徐々に上向いているが、減産期から生産期への移行を手掛かりに売り込むような動きは見られなかった。

 一方、モンスーン・シーズン入りで局地的に豪雨が報告されており、タイでも気象当局から洪水発生のリスクが高まっていることが報告されている。また、今後は異常気象「エルニーニョ現象」が発生することで、生産障害が発生するリスクに対する警戒感もある。ただ、天候リスクのプレミアムを積極的に織り込んでいくような動きは見られなかった。

 為替は1ドル=140円水準で膠着化し、円安による押し上げ効果も一服した。6月13~14日の米連邦公開市場委員会(FOM)後に、円相場がどのような動きを見せるのかが注目されている。

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