【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、需要不安と円高で軟調
連載 2023-05-15
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台後半までじり安の展開になった。大型連休明け直後は上海ゴム相場の底固さを受けて、一時215.90円まで上昇した。これは3月15日以来となる約1カ月半ぶりの高値更新になる。しかし、その後は改めて需要不安を織り込む動きが優勢になり、210円台を割り込んでいる。為替が円高気味に推移したこともネガティブ。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半まで上昇し、3月9日以来の高値を更新している。中国経済の減速懸念から中国株は上値を抑えられているが、上海ゴム相場は短期投機筋主導で底固く推移した。
4月の財新製造業PMIは前月の50.0から49.5に、サービス業PMIは57.8から56.4に、それぞれ低下している。また、4月の貿易統計によると輸出が前年同月比8.5%増(前月は前年同月比14.8%増)、輸入は同7.9%減(同1.4%減)。これらの指標は、中国の4~6月期経済成長に疑問を投げ掛けるものであり、上海ゴム相場は安値低迷が支持される環境になっている。しかし、中国コモディティ市場全体で急落地合が一服していることもあり、低調な経済指標を手掛かりに大きく値を崩すことは回避された。
一方で、ゴム需要見通しに関する不確実性は高まっている。5月に入ってからは米地方銀行の経営不安、米債務上限問題が投資家のリスク選好性を後退させている。また、ゼロコロナ政策終了後の中国経済成長は期待されていたほどの強さを見せることができていない。原油や非鉄金属、鉄鉱石など広範囲にわたる産業用素材市況が低迷状態にあることに変化はなく、ゴム相場のみを積極的に押し上げていくような動きは見られなかった。ただし、逆に大きく値を崩していくような動きも見られず、大型連休明け後は安値ボックス圏で不安定な値動きが繰り返されている。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、5月11日時点でUSSが前週比1.4%高の48.12バーツ、RSSが同0.3%高の50.35バーツ。集荷量は依然として低迷しているが、現物相場はUSSがやや底固い一方で、RSSは動意を欠いている。東南アジアの一部では、最高気温が40度近くに達する熱波が報告されており、減産期から生産期への移行に不透明感もあるが、本格的に供給リスクを織り込んでいくような動きは見られない。JPXゴム先物相場も大幅な順サヤ(期近安・期先高)環境に変化がみられず、現時点では潜在的な相場上昇要因との評価に留まる。
ドル/円相場が5月2日の1ドル=137.77円をピークに、134円台までの円高・ドル安に振れていることは、円建てゴム相場にネガティブ。
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