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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国の指標良好で安値修正

連載 2023-04-24

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円台前半まで値上がりし、3月15日以来の高値を更新した。中国の良好な経済指標を手掛かりに上海ゴム相場が安値修正の動きを見せたことが好感され、JPXゴム相場も切り返した。為替が円安に振れたこともポジティブ。1ドル=135円を一時上抜き、3月10日以来の円安に。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元の節目を一時回復する展開になった。4月上旬は1万1,000元台中盤で揉み合う展開が続いていたが、年初来安値更新は見送り、修正高局面に移行した。3月の中国新車販売台数が前年同月比9.7%増と強めの数値になったことに加えて、4月18日に発表された中国経済指標が良好だったことが、需要不安の緩和を促している。

 中国の1~3月期国内総生産(GDP)は前期比2.2%増、前年同期比4.5%増となった。市場予想と一致しているが、厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が終了したことで、主に個人消費環境が改善していることが確認された。また、3月鉱工業生産は前年同月比3.9%増(前月は2.4%増)、小売売上高は同10.6%増(同3.5%増)となっている。いずれも3月に中国の経済成長が加速した可能性が高いことを示している。

 世界経済の減速で輸出が低調であり、自動車市場に関しては政府の販売奨励策の終了で回復の遅れも懸念されている。しかし、3月までと比較すると需要の回復期待が若干ながら高まり始めていることはポジティブ。

 積極的に上値を買い進んでいくような勢いまでは認められないが、上海ゴム相場は2022年7月と10月に続き、今年3月と4月も1万1,000元台中盤で4度目のサポートを受けており、安値限界に達した可能性が意識されている。中国国家統計局は、「経済は安定して回復に転じ、良いスタートになった」と自信を見せているが、今後は中国経済、タイヤの需要環境が本当に改善傾向を見せるのかが注目されることになる。

 一方、供給サイドは減産期のピークを迎えており、供給はタイト化。タイ中央ゴム市場では集荷量が著しく落ち込んでいる。暦の上では乾季から雨季に転換しているが、まだ高温乾燥気味の天候が集荷量を抑制している。ただし、産地相場は消費地相場の安値修正の動きと連動して小幅上昇しただけで、産地主導でゴム相場の値位置を大きく切り上げていくような動きは、引き続き確認できていない。

 4月20日終値だと4月限の206.60円に対して9月限は212.80円であり、6.20円の順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。国内では営業在庫の積み上がりもあり、期近限月主導の上昇は見送られている。

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