PAGE TOP

【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、売買交錯で安値揉み合い

連載 2023-04-17

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=203.30円まで値下がりして3月22日以来の安値を更新した後、200円台中盤まで小幅切り返す展開になった。需要不安を背景とした売り圧力が維持されたが、安値修正の動きに下値を支えられ、明確な方向性を打ち出せなかった。3月下旬以降は安値ボックス気味の展開が続いている。出来高も低迷し、積極的な売買は見送られている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,560元まで値下がりした後、1万1,000元台中盤から後半で下げ一服となった。年初来安値1万1,550元割れが回避される一方、改めて買い進むような動きは見られなかった。

 中国の3月新車販売台数は前年同月比9.7%増の245万1,000台と2カ月連続でプラスになっている。日系大手3社はいずれも前年割れと不振だったが、新エネルギー車を中心に販売が回復する兆候が見られることはポジティブ。2022年12月に自動車取得税の軽減など政府の販売奨励策が終了したことで、年初から自動車購入は伸び悩みが目立ったが、消費者が自動車購入の動きを再開した可能性がある。ただ、販売回復のために過剰な値下げ競争が行われているとの指摘もあり、同統計を手掛かりに上海ゴム相場を大きく押し上げていくような動きは見られなかった。

 国際通貨基金(IMF)は、2023年の世界経済成長率見通しを2.8%とした。1月時点から0.1%引き下げられており、根強いインフレや金融セクター混乱などの影響を指摘している。ただ、こうした報告を手掛かりに大きく売り込むような動きも見られなかった。

 4月入りしたことで産地の減産傾向は一段と強くなっており、タイ中央ゴム市場の集荷報告も低迷している。報告が行われない日もあり、減産期のピークを迎えていることが確認できる。ただ、減産期を手掛かりに産地相場高、消費地相場で期近限月にプレミアム加算を進めるような動きは確認できていない。

 日本の気象庁が4月10日に発表した「エルニーニョ監視速報」では、現在はエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と報告されている。夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性も報告されているが、現時点では天候リスクを織り込む動きは限定されている。例年通りに5月以降に集荷量が回復する見通しになっている。

 JPXゴム先物相場は当限が200円の節目を割り込んだが、中心限月の9月限は4月13日時点で206.50円となり、7.30円の順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。このまま当限の200円割れ定着が進むのかが注目される。

関連記事

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物