【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、リスクオフ一服で自立反発
連載 2023-04-03
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円水準まで切り返す展開になった。米欧銀行の信用不安を背景としたリスクオフ圧力を受けて、3月22日には2021年9月以来の安値更新となる201.90円まで値下がりしていた。しかし、その後はリスク投資の地合改善で株高や原油高が進行したことを受けて、3月28日には212.80円まで切り返した。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台後半まで切り返す展開になった。リスクオフ環境を背景に1万1,000元台中盤で上値を抑えられていたが、リスク投資の地合改善で自立反発的な動きをみせた。
引き続き金融不安をどのように消化するのかが問われているが、マーケット環境全体にある程度の落ち着きがみられる。依然として一部銀行株の急落、中小銀行からの預金引き出しといった動きも報告されているが、パニック的なリスクオフ圧力には一服感がみられる。米政府が預金者保護の姿勢を鮮明にしていること、UBSによるクレディ・スイス買収、日米欧の中央銀行による流動性供給などが、マーケット環境全体の安定化を促している。積極的にリスクテイクを進めるような動きまではみられないが、株価や原油相場などは下げ一服後の修正高目線にシフトしており、この流れの中でゴム相場も安値から10円を超える反発になった。
一方で、これで金融不安が終息に向かうのかは依然として不透明である。また、信用収縮の発生が実体経済にネガティブな影響を及ぼすリスクも警戒されている。このため、戻りでの売り圧力も強く、大きな値動きには発展しなかった。特に当限が200円の節目水準から伸び悩んだことが、期先限月の上げ幅も限定した。
3月27日に3月限が納会を迎えたが、受け渡し価格は203.20円となった。過去4カ月連続で210円台での受け渡しが続いていたが、2021年9月限以来の安値になる。ゴム相場の実勢悪化を再確認させる動きと評価されている。
一方、集荷量は抑制されている。減産シーズンが着実に進んでおり、タイ中央ゴム市場でもUSS、RSSともに集荷量は大きく落ち込んでいる。現物相場は、3月30日時点でUSSが前週比2.1%高の1キロ=47.63バーツ、RSSが同1.1%高の50.30バーツ。安値から切り返しをみせているが、これはもっぱら消費地相場の安値修正の動きに連動した値動きである。例年だと4月に向けて減産傾向が強まるが、3月時点では供給サイドの動向はあまり材料視されなかった。JPXゴム相場も当限に供給リスクのプレミアムを加算するような動きはみられず、もっぱら需要サイドのリスク評価を巡る売買が中心になった。
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