【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、米欧金融不安で急落地合に
連載 2023-03-20
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台後半まで下落する展開になった。3月3日の231.60円をピークとした値下がり傾向にあり、2021年9月以来の安値を更新している。米欧で金融機関の信用不安が急浮上する中、投資家のリスク選好性が後退したことでゴム相場の上値も圧迫された。為替が円高気味に推移したこともネガティブ。期近2限月が200円の節目を割り込み、順サヤ(期近安・期先高)傾向は維持された。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元の節目を下抜き、さらに1万1,000元台中盤まで急落した。需要不安からダウントレンドを形成していたが、世界的な株安や原油安を受けて、下落ペースが加速した。2022年7月以来の安値を更新している。
3月10日に米シリコンバレーバンクが経営破綻し、12日には米シグネチャーバンクも連鎖破綻した。さらに15日にはスイス金融大手クレディ・スイスの経営不安も急速な広がりを見せ、投資家のリスク選好性が一気に後退した。
最近の急激な金利上昇の影響で、金融機関の保有する債券に評価損が発生するなど、金融機関の事業環境が急激に悪化しているのではないかとの懸念が広がっている。一部では取り付け騒ぎの発生も報告されており、リーマン・ショック型の金融危機に発展するリスクも警戒されている。一部金融機関の破綻に留まるのか、グローバルな金融危機に発展するのかは先行きの予想が難しく、投資家は米国債や金、ビットコインなどの安全資産に資金シフトを進めている。その影響で株式市場からは資金引き揚げの動きが強まり、コモディティ市場でも原油相場が急落するなど、リスクオフの影響が強まった。ゴム相場も例外にはならず、急落地合を形成している。
また、中国の新車販売市場の低迷もネガティブ。3月10日に発表された1~2月期の新車販売台数は前年同期比15.2%減となっている。国の減税や補助金などの販売奨励策が年末で終了したことで、需要の反動減が発生している。地方政府が独自に販売奨励策を導入する動きや、自動車メーカーの値下げといった対応も報告されているが、ゼロコロナ政策の終了でも新車販売市場の回復には時間が必要との見方もネガティブ。
一方、減産期の影響で産地集荷量は抑制されている。インドネシアやマレーシアでは豪雨が報告されていることも供給不安を高めている。ただ、タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月16日時点でUSSが前週比1.8%高の1キロ=47.85バーツ、RSSが同1.9%安の50.17バーツと強弱まちまちに。消費地相場の上値の重さが産地相場を圧迫しており、全般的に値動きは鈍かった。
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