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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、チャート主導で軟化

連載 2023-02-20

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円台後半まで値下がりする展開になった。220円台中盤から後半で手掛かり難からボックス気味の相場展開が続いていたが、同ボックス下限を割り込むとチャート主導の売り圧力が強まり、一気に値を崩した。出来高も増えており、ファンドや個人投資家のストップロス、トレンドフォローの売りを巻き込む形で、下げ幅を拡大したことが窺える。

 一方、上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台中盤で方向性を欠く展開になった。大きく値を崩すことも、逆に反発を打診することもなく、週を通じて方向性を欠いた。ここ最近のJPXゴム相場は、上海ゴム相場主導の値動きが目立っていたが、久しぶりに上海ゴム相場の動向と関係のない値動きになっている。

 マーケット全体を見渡すと、インフレ懸念の蒸し返しで各国中央銀行の大幅利上げに対する警戒感が強くなっている。特に米国では、従来だと5月にも利上げサイクルが終了すると予想されていたのが、6月、さらには7月も利上げが続く可能性が警戒されている。これは世界経済の減速懸念を高めることになり、原油や非鉄金属相場などの上値が圧迫されていることはネガティブ。

 ただ、コモディティ市場全体で見ると大きく値を崩すような動きが観測されている訳ではない。引き続き中国経済の正常化期待も強く、需要環境の評価や見通しに大きな変化は見られない。

 実際に上海ゴム相場は方向性を欠く展開が続いており、こうした中でJPXゴム相場が突然急落したことに対しては違和感も強い。ただ、ファンダメンタルズよりもチャート主導の値動きが形成された模様だ。このまま上海ゴム相場が下げ渋ると下げ一服となる可能性が高まる一方、上海ゴム相場が後追いで値下がりするとさらに大きく値を崩すリスクが高まる。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月16日時点でUSSが前週比2.4%安の1キロ=46.60バーツ、RSSが同0.5%安の49.25バーツとなっている。産地相場もやや上値の重い展開になっている。集荷量はUSS、RSSともに大きく落ち込んでいるが、あまり材料視されていない。
 国内独自のネガティブ材料としては、営業在庫が増加傾向を強めていることが指摘可能だ。JPXの生ゴム指定倉庫在庫は、2022年末の5,167トンから1月31日時点では7,423トンまで急増している。

 当限と6番限のサヤは2月16日時点で14.50円の順サヤ(期近安・期先高)となっている。前週と比較すると若干順サヤ傾向が強くなったものの、サヤ環境に大きな変化は生じていない。

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