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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急激な円安も上値重い展開

連載 2022-04-25

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=260円水準でやや上値の重い展開になった。為替相場は急激な円安に振れているが、上海ゴム相場と産地相場の上値の重さから伸び悩み、逆に調整売りが目立った。円安環境で円建てコモディティ相場が総じて急伸するなか、円建てゴム相場に関しては最近のボックス圏内で逆に上値を圧迫されている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半から中盤で上値を抑えられている。大きく値を崩している訳ではないが、戻り局面では売り圧力の強さが目立つ。

 中国の1~3月期国内総生産(GDP)は前年同期比4.8%増となり、市場予測の4.4%増を上回った。前期比では1.3%増であり、昨年10~12月期から成長ペースが鈍化していることが窺えるが、改めてゴム相場を売り込むような材料とは評価されていない。引き続き中国国内で新型コロナウイルスの感染被害が拡大していることが警戒されるが、その一方で中国政府が「ゼロ・コロナ」政策を継続するために大型景気対策を打ち出すとの観測もあり、上値が重いながらも下げ渋る中途半端な地合が続いている。

 一方、ソンクラン(水掛け祭り)の連休明け後のタイ中央ゴム市場の集荷量は、増加傾向にある。まだ乾季型の気象環境が続いているが、降水量が増え始めていることもあり、集荷環境も3月と比較すると安定化し始めている。例年だと集荷環境が本格的に改善し始めるのは5月になるが、高騰していた産地相場に対しては調整圧力が目立ち始めている。4月21日時点の現物相場は、USSが12日に対して4.5%安の1キロ=66.54バーツ、RSSが同2.1%安の70.49バーツとなっている。このまま産地相場のピークアウトが確認されると、JPXゴム相場の上振れリスクも後退する。減産期型の上昇地合が終ったのか、一時的なスピード調整に留まるのかが焦点になる。

 一方、ドル/円相場の値動きが激しくなっているため、為替要因の売買も目立つ。1週間で1ドル=125円台から一時129.40円まで急激な円安圧力が発生している。日米の金融政策環境の違い、日本銀行が円安是正の動きを開始する兆候がみられないことなどが、円安・ドル高を加速させている。このまま円安圧力が維持されると、円建てゴム相場は大きく下がりづらくなる。

 ただ、4月中旬はこれだけの急激な円安環境でもJPXゴム相場は下げ渋るのに精いっぱいの状態にあり、4月上旬と比較するとゴム相場そのものの実勢は悪化していることが窺える。仮に円安圧力がみられなければ、大きく下落していた可能性も想定される状況だった。

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