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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム、円安と産地高で底固い展開

連載 2022-03-28

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=250円台中盤まで値上がりする展開になった。上海ゴム相場は安値圏で明確な方向性を打ち出せなかったが、安値更新の動きは一服した。このため、円安や産地相場高を背景に買い圧力が強まり、250円の節目突破から一段高になった。約3週間ぶりの高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半から中盤で方向性を欠いた。3月16日の1万3,150元で下げ一服となったが、明確な反発までは見られなかった。中国政府が大規模な景気対策を打ち出すとの観測がポジティブ材料視される一方、新型コロナウイルスの感染拡大で行動規制導入の動きがネガティブ材料視され、結果的に強弱材料に挟まれたことで、トレンド形成は見送られた。

 国内では円安の影響力が増している。世界的なインフレ圧力が高まるなかで各国中央銀行は利上げなどの金融引き締めを活発化させているが、日本銀行は特段の動きを見せていない。日米金融政策環境の違いが円安・ドル高を促しているが、黒田総裁は円安を黙認する姿勢を示している。このため、3月初めには1ドル=115円水準で揉み合う展開が続いていたドル/円相場は、一気に121円台までの円安・ドル高に振れている。その影響で、需給動向に関係なく円建てゴム相場に対しては上昇圧力が発生している。さらに円安が続くかが重視されよう。

 上海ゴム相場の下げ一服感を受けて、産地相場の上昇が再開されている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月24日時点でUSSが前週比1.9%高の1キロ=64.25バーツ、RSSが同2.1%高の68.89バーツとなっている。

 乾季による減産傾向は着実に強くなっているが、3月上旬は上海ゴム相場安に上値を抑えられ、辛うじて値崩れが回避される展開に留まっていた。しかし、その上海ゴム相場が下げ止まると産地相場は素直に減産圧力を評価し、上値追いの展開になっている。特にRSSは年初来高値圏まで切り返す展開になっており、地合の強さが再確認されている。例年だと4月に向けて一段と減産傾向が強まるため、「上海ゴム相場の下げ一服→産地相場高→JPXゴム相場高」の流れが維持されるかに注目したい。

 ウクライナ情勢の緊張状態が続くなか、原油相場が改めて急騰している。ロシア産の供給減少でも国際原油需給を安定化させる目途が立たない状態が続いている。ただ、ゴム相場と原油相場との間には、明確な相関関係は認められず、コモディティ価格全体の高騰地合はほとんど材料視されていない地合が続いている。

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