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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海安と円安で横ばい推移

連載 2022-03-21

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240円台前半をコアに揉み合う展開になった。上海ゴム相場安と円安の強弱材料が綱引きになる中、明確な方向性を打ち出せていない。3月8日の236.30円で下げ一服となっているが、本格的に安値修正を進めるまでの勢いはなく、決定打を欠いている。産地相場が方向性を欠いたことも、積極的な値動きを困難にさせた。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半まで軟化する展開になった。ウクライナ情勢の緊張感が高まっても、逆に緊張緩和期待が高まっても、上海ゴム相場は一貫して戻り売り優勢の展開になっている。株価との間にも明確な連動性が認められず、相場テーマの把握が難しい状況が続いている。

 一応は、中国でも新型コロナウイルスの被害が拡大し、深センなど一部都市でロックダウン(都市封鎖)が再開された影響とも言われているが、実際には特に意味なく投機筋が売り込んでいるだけの可能性が高い。

 マーケット全体を見渡すと、ウクライナとロシアの停戦合意の期待が浮上していることが、これまで急騰していた原油や非鉄金属相場を大きく下押ししている。一方で、株価には下げ一服感が目立つが、ゴム相場はそのどちらとも連動していない。国際通貨基金(IMF)はウクライナの紛争について、「成長を阻害し物価を押し上げることになる」としている。ゴム相場の視点では一次産品の値上がりによるインフレ懸念はポジティブ、逆に貿易やサプライチェーンの混乱はネガティブになる。しかし、ゴム相場は明確なテーマを設定できておらず、コモディティ相場全体が大きな波乱の展開になるなかで、相対的に鈍さ、安定さが目立つ状況にある。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月17日時点でUSSが前週比2.3%安の1キロ=61.80バーツ、RSSが同0.3%安の67.07バーツ。季節的な減産圧力が着実に強まるなか、集荷量は明らかな減少傾向にある。ただ、上海ゴム相場の軟化傾向の影響を完全に無視できず、RSSは下げ渋るほぼ横ばいの展開が続いているが、USSは軟化している。日本の気象庁はラニーニャ現象について、従来の春の間に収束するとの見方を、ラニーニャ現象が続く可能性の方が高いと修正している。ただ、天候リスクを積極的に織り込むような動きは見られず、減産期のマイルドなサポートが確認されるだけの展開に留まっている。

 東南アジアでは出入国規制の緩和が進んでいるため、農業部門の労働力不足の問題が緩和されるとの期待感が浮上していることはネガティブ。

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