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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海連動で調整売り膨らむ

連載 2022-03-14

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240~250円水準まで軟化する展開になった。ウクライナ情勢の緊迫化を背景に原油や非鉄金属、穀物相場は大きく値位置を切り上げたが、ゴム相場は逆に上値の重い展開になっている。世界経済の先行き不透明感の強さ、上海ゴム相場の軟化、産地相場の上げ一服感を背景に、調整売り優勢の展開が続いている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台中盤まで値下がりした後、1万4,000元水準を回復する不安定な値動きになった。他の資産クラスとの間に明確な相関、逆相関関係が認められず、投機色の強い乱高下になっている。年初来安値1万3,550元割れには抵抗を見せる一方、1万4,000元台からさらに買い進むような動きはみられず、高ボラティリティながらも方向性が定まっていない。

 マーケット全体を見渡すと、ウクライナ情勢の消化が最優先されており、経済指標などに対する関心は薄れている。原油、非鉄金属、穀物相場などがウクライナやロシアからの供給不安を織り込んで急伸したが、天然ゴムに関しては供給不安が材料視されることはない。一方で、ロシアのタイヤ産業などは規模が大きい訳ではなく、各国の対ロシア経済制裁による天然ゴムの調達難によって、産地需給が著しく緩む訳でもない。世界経済の減速リスクの高まりという意味では値下がりが支持される一方、インフレ懸念の高まりという意味では値上がりが支持される不安定な相場環境になっている。

 ウクライナやロシアの自動車部品工場の操業が止まると、特に欧州地区の新車生産に影響が生じる可能性があるが、現時点では新車用タイヤ需要の減少リスクを本格的に織り込むような動きは見られない。結果的に上海ゴム相場は不規則な乱高下を繰り返し、JPXゴム相場は産地主導の上昇を一服させ、調整売り優勢の展開になっている。ウクライナ情勢が緊迫化するなかで、価格水準を切り下げた数少ないコモディティの一つになっている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月10日時点でUSSが前週比2.6%安の63.65バーツ、RSSが同0.2%安の67.62バーツ。低集荷環境に変化はなく、特にRSSの集荷量は著しく落ち込んでいる。例年と比較して特別に厳しい気象環境ではないが、乾季型の気象環境が報告される地域が増えており、ウインタリング(落葉期)が広がりを見せている。ただ、低集荷環境を背景とした産地相場高は2月で一服し、3月入りしてからは不安定化する消費地相場と連動して値下がり傾向が強くなっている。これまでの急伸幅を考慮すれば調整安の範囲内だが、産地主導の上昇には歯止めが掛かっている。

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