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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、押し目買い入るも小動き

連載 2021-11-22

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=220円台中盤から後半まで小幅切り返す展開になった。11月5日の218.30円で下げ一服となった後、220円の節目水準での保ち合いを経て、一時230円台を回復した。ただ、原油相場の軟化もあって同水準からさらに大きく上値を切り上げるような動きは見られなかった。

 為替市場では円安傾向が改めて強くなっており、為替要因からも円建てゴム相場はマイルドにサポートされた。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元水準での保ち合い相場を上放れし、11月16日の1万4,840元まで値上がりした。その後は調整売りに上値を抑えられ、1万4,000元台中盤まで上げ幅を削る展開になっている。

 中国不動産大手・中国恒大集団のデフォルト回避の見方から、非鉄金属相場などが一定の底固さを見せる中、ゴム相場も下値は固かった。9月で当面のボトムは確認しているとの見方から、押し目買いが入っている。ただ、改めて10月高値を上抜いていくまでの勢いは見られず、値動きの不安定さが目立っている。

 東南アジアでは豪雨が報告される地域が目立つ。ベトナムやタイ南部、ラオス、カンボジアなどを中心に農作業への影響も報告されている。ただ、土壌水分不足が緩和されると好意的な評価もあり、ゴム相場に対して明確な影響を及ぼすことはなかった。タイ中央ゴム市場ではUSSの集荷量が若干落ち込んでおり、ラニーニャ現象の影響も見え隠れしているが、RSSの集荷量は安定している。11月18日時点の現物相場はUSSが前週比1.0%高の1キロ=54.28バーツ、RSSが同0.3%高の57.19バーツ。総じて消費地主導の展開になっており、供給リスクの織り込みを進めていくような動きは鈍い。

 需要サイドでは、各国で厳しい新車販売環境が報告されていることはネガティブ。タイヤメーカー各社の7~9月期決算でも新車用タイヤ販売の不調報告が目立つ。ただ、半導体不足による自動車生産環境の悪化はピークを脱したとの報告も目立ち、半導体関連で上値を抑えられていた資産クラス全体が底固さを見せている。タイヤに関しても、買替用需要は好調であり、新車販売環境の正常化期待が強まると下値が固まりやすくなる。

 一方で、在庫の増加圧力は維持されており、需給にタイト感が浮上するには至っていない。JPX天然ゴム先物相場も1番限と6番限との間で11月18日終値だと14.40円もの大幅な順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。ゴム需給環境の評価を背景に積極的に売買を仕掛けるような動きまではみられなかった。

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