PAGE TOP

連載コラム「つたえること・つたわるもの」⑩

好かれる人物は「陽」、嫌われる人物は「陰」のオーラを放つ。

連載 2017-02-14

出版ジャーナリスト 原山建郎

 和語(やまとことば)では、「(シン)」を〈うら〉、「(メン)」を〈おも(て)〉と訓読する。上古代の日本人は、「心の内〈うら〉にある思い(心情)が、外〈おもて〉の顔(面)にあらわれる(表情)」ととらえた。昔から「目は口ほどに物を言う」「(心が)顔に出る・顔に書いてある」という言い方や、「心構え」「気構え」「面(つら)構え」「身構え」などの言葉もある。前の二つは心〈うら〉の抽象的な姿勢(スタンス)を、後の二つは面〈おも(て)〉の視覚的な姿勢(アピアランス)をあらわす。外見(見た目)から受ける印象をいう「老舗らしい・店構え」、「立派な・門構え(家構え)」などの常套句もよく使われる。

 また、「真面目」を〈まじめ〉と読めば【うそやいいかげんなところがなく、真剣であること。本気であること】だが、〈シンメンモク〉なら【本来の姿・ありさま。転じて、真価】となる。〈シンメンモク〉とは、その人の目や表情(面・おもて)に本来の姿(心・うら)があらわれる、つまり裏〈うら〉表〈おもて〉のない(思いと表情が一致する)ことであり、仏教用語では「真面目(シンメンモク)を発揮する」と用いる。

 「メラビアンの法則」によれば、コミュニケーションの受け手に与える第一印象はどの要素によって決まるかを米国人に質問したところ、半数以上の回答者が「見た目(外見)」のインパクトを挙げたという。

◎55%が「見た目・仕草・表情などの視覚的要素」…………見た目(ボディランゲージ)
◆38%が「声質・声量・話すテンポなど非言語的要素」……話し方(呼吸・間の取り方)
●7%が「話の内容(言語的要素)」……………………………話の中身(論理的思考)

 かつて、私は日本人の「人間観察」調査を行ったことがある。少し古い資料で恐縮だが、大学の授業や講演会で実施した「好かれる人物・嫌われる人物のイメージ」アンケート(それぞれ思い浮かぶイメージを、3つずつ書いてもらう)を紹介しよう。Aは年齢別(若者/高齢者)、Bは地域別(東京/沖縄)である。

A 若者/高齢者へのアンケート
◎20・21歳の女子大生(武蔵野女子大学文学部3年生204名、2003年調査)
「好かれる人物」ベスト11(カッコ内は、3つずつ回答の構成比) ①明るい人(56.9%)/②笑顔が素敵な人(44.6%)/③やさしい人(40.7%)/④話を聞いてくれる人(36.3%)/⑤気配りのある人(24.0%)/⑥思いやりのある人(23.5%)/⑦ユーモアがある人(22.5%)/⑧話し上手な人(13.7%)/⑨自分の意見が言える人・⑨気が利く人・⑨誰でも裏表なく接する人(12.3%)
「嫌われる人物」ワースト10 ①自己中心的な人(44.6%)/②悪口(陰口)を言う人(33.3%)/③暗い(陰険な)人(24.0%)/④人の話を聞かない人(19.6%)/⑤自分勝手な人(17.3%)/⑥わがままな人(16.2%)/⑦約束を守らぬ人(12.7%)/⑧嘘をつく人(9.3%)/⑨一方的に話す人(8.8%)/⑩マイナス思考の人(8.3%)

60~80歳代の高齢者(「敬老の日」の講演会参加者218名、2006年調査)
★「好かれる人物」ベスト10 ①明るい人(40.3%)/②やさしい人(25.7%)/③笑顔が素敵な人(23.4%)/④話を聞いてくれる人・④思いやりのある人(17.0%)/⑥親切な人(15.1%)/⑦おだやかな人・⑦朗らか(陽気)な人(11.0%)/⑨嘘をつかない人・⑨清潔感のある(健康な感じの)人(9.6%)
★「嫌われる人物」ワースト11 ①暗い(陰気な)人(31.3%)/②悪口(陰口)を言う人(22.9%)/③わがまま(自分勝手)な人(22.4%)/④自己中心(利己的)な人(17.4%)/⑤意地悪な人(14.9%)/⑥自分の話ばかりする人(14.4%)/⑦自慢話ばかりする人(10.4%)/⑧怒りっぽい人(9.5%)/⑨嘘をつく人(7.5%)/⑩偉そうな(威張る)人・⑩不潔な(臭い・不健康な)人(7.0%)

B 東京/沖縄への女性アンケート
◎東京の女性(東京都トラック協会婦人部+荒川区の幼稚園教諭・園児の母親、1994年調査)
★「好かれる人物」ベスト10 ①明るい人/②やさしい人/③思いやりのある人/④清潔感のある人/⑤笑顔が素敵な人/⑥話し上手、聞き上手な人/⑦誠実な人/⑧誰にでも親切な人/⑨気配りがある人/⑩相手の立場で考えられる人
★「嫌われる人物」ワースト10 ①自分勝手な人/②暗い(陰険な)人/③悪口(陰口)を言う人/④和を乱す人/⑤不潔な(きたない)人/⑥約束を守らぬ人/⑦あたり散らす人/⑧優柔不断な人/⑨いやみな人/⑩他人の足を引っ張る人

◎沖縄の女性(沖縄タイムズ「女性倶楽部」での講演・事前アンケート、1995年調査)
★「好かれる人物」ベスト10 ①明るい人/②思いやりのある人/③やさしい人/④楽しい(愉快な)人/⑤笑顔が素敵な人/⑥好感が持てる人/⑦話しやすい人/⑧信頼できる人/⑨言葉を守る人/⑩ユーモアのある人
★「嫌われる人物」ワースト11 ①意地悪な人/②不潔な(きたない)人/③せこい(ケチな)人/④自己本位(自己中心)の人/⑤暗い人/⑥悪口(陰口)を言う人/⑦嘘つきな人/⑧短気な人/⑨わがままな人/⑨思いやりのない人/⑨一人でしゃべる人

 まず、「好かれる人物」のベスト3は、若者=①明るい/②笑顔が素敵/③やさしい、高齢者=①明るい/②やさしい/③笑顔が素敵、東京の女性=①明るい/②やさしい/③思いやり、沖縄の女性=①明るい/②思いやり/③やさしい、となった。ポイントは「明るい・笑顔・やさしい・思いやり」であり、あたたかい(温かい・暖かい)「」のオーラ(気)を身にまとった人が、誰からも「好かれる人物」像である。

 次に、「嫌われる人物」のワースト3は、若者=①自己中心的/②悪口(陰口)を言う/③暗い(陰険)、高齢者=①暗い(陰気)/②悪口(陰口)を言う/③わがまま(自分勝手)、東京の女性=①自分勝手/②暗い(陰険)/③悪口(陰口)を言う、沖縄の女性=①意地悪/②不潔(きたない)人/③せこい(ケチ)、となった。ポイントは「自分勝手、わがまま、悪口・陰口、暗い・陰険・陰気」であり、つめたい(冷たい・暗い)「」のオーラ(気)を周囲に放つ人が、みんなが敬遠する「嫌われる人物」のイメージである。

 ところで、会社の同僚や上司、仕事の相手先から、あなた自身は「明るい人」と見られているだろうか、あるいは「自分勝手な人」などと思われていないだろうか。次回のコラムでは、「嫌われる人物」から「好かれる人物」に変身する、最強の「オーラ・チェンジ・マジック(「気」を変える魔法)」を紹介しよう。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物