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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要不安で上値重い展開

連載 2021-02-01

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=220円台後半まで下落する展開になった。年初からは総じて235~245円水準で玉整理中心の方向性に乏しい展開が続いていたが、需要不安を織り込む形で値下がりし、1月4日以来の安値を更新している。

 上海ゴム先物相場も前週の1トン=1万5,000元台乗せから急激に地合を悪化させ、1万4,000元割れを打診する展開になっている。1月12日以来の安値を更新している。

 米国でバイデン新政権が誕生する中、大型経済対策に対する期待感が、産業用素材市況全体をサポートしていた。しかし、議会では債務膨張に対する警戒の声も強く、法案成立までは時間が必要との慎重な見方が優勢になっている。

 欧米では新型コロナウイルスの感染被害が深刻化する一方の状態にあり、中国でも新規感染者数の増加が報告されている。中国当局は2月の春節で延べ17億人が移動する見通しにある中、PCR検査の拡充など対応を急いでいる。3月には重要政治日程である全国人民代表大会(全人代)を控えていることもあり、パンデミック再発のリスクに神経をとがらせている。ただ、2月にどのような感染状況になっているのかは先読みが難しいこともあり、原油や非鉄金属相場などの上値は重く、ゴム相場も大きく値崩れは起こしていないが、じり安傾向を強めている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月28日時点でUSSが前週比5.5%安の1キロ=52.72バーツ、RSSが同3.6%安の55.73バーツとなっている。ウインタリング(落葉期)の始まる時期を迎えているが、足元の集荷量が安定していることもあり、特に供給サイドからリスクプレミアムを織り込むような動きはみられない。インドネシアやマレーシアでは、豪雨による洪水被害も報告されているが、産地相場は昨年9月中旬以来の安値圏まで値下がりしている。

 1月25日にはJPXゴム1月限が納会を迎えたが、受渡価格は335.00円、受渡高は247枚となった。昨年12月限の292.00円から43.00円の急伸になっている。納会直前には当先の逆サヤ(期近高・期先安)が一時100円台に乗せている。ただ、これは1月限でショート・スクィーズが発生した影響とみられ、2月限は230円台に抑制されている。緩やかな逆サヤ傾向は維持されているが、総じて安定したサヤバランスに修正されている。

 2月はさらに需要不安を織り込む動きが強まるのか、それとも減産期に向けての供給制約の動きを織り込むのかが焦点になる。三角持ち合い相場からのブレイクの有無が注目される。

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