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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、株急落で年初来安値を更新

連載 2018-10-29


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台中盤、TSRが150円の節目水準で上値の重い展開になっている。世界的な株価急落傾向に歯止めが掛からない中、投資家のリスク回避志向がコモディティ市場にも波及しており、原油や非鉄金属相場などと連動してゴム相場も値下がりしてる。為替相場が円高方向に振れたこともネガティブであり、RSSとTSRはともに年初来安値を更新している。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万2,000元の節目を下抜く展開になっている。上海株式相場が約4年ぶりの安値を更新する展開になる中、1万2,000元台をコアとしたボックスを下抜けしつつあり、9月7日以来の安値を更新している。

 前週に続いて世界の株式相場が不安定化していることが、ゴム相場も下押ししている。①サウジアラビアの反政府記者殺害事件を受けての地政学リスクの高まり、②イタリア財政問題、③米中貿易戦争、④中国経済の減速、⑤企業業績のピークアウト懸念、さらには⑥11月の中間選挙のイベントリスクもあって、投資家がリスク資産から一斉に資金を引き揚げる動きをみせている。こうした流れは当然にゴム相場に対してもネガティブであり、主にマクロ投資環境の悪化がゴム相場を下押ししている。

 特にゴム市場の視点では中国経済の動向が注目されるが、7-9月期国内総生産(GDP)は前年比6.5%増と、前期の6.7%増から大きく下振れし、二期連続の成長鈍化になっている。もともと、中国に関してはレバレッジ解消の経済構造改革を進める途上で成長鈍化は許容されていたが、米中対立の激化でそのペースが当局のコントロール可能なレベルを超えているのではないかとの懸念が浮上している。

 一方、産地の集荷量は季節要因の影響もあって安定してる。特に目立った生産トラブル等も報告されていない。ただタイ中央ゴム市場の現物相場は、10月25日時点でUSSが前週比1.4%上昇の1キロ=40.55バーツ、RSSが同0.6%安の42.53バーツと、消費地相場ほどに大きな動きは見せていない。

 金融市場の不安定化でゴム需要に対しても下振れ圧力が発生することが警戒されるも、産地相場がさらに大きく値崩れを起こすことは回避されており、安値ボックス化している。例年、この時期のゴム相場は底練り型の値動きになり易いが、今季も現物市場は上値が重いながらも値崩れは回避される展開になっている。

 株価動向次第の相場環境が続くが、上値が重いながらも急落は回避される展開が続き易い。

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