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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値を更新

連載 2018-07-30


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=170円台を割り込み、年初来安値を更新した。改めて上海ゴム相場の上値が圧迫される一方、為替市場で円安圧力が一服する中、戻り売り優勢の展開になっている。大きく値崩れを起こすには至っていないが、7月5日の166.90円を下抜き、トレンドが依然として下向きであることを再確認している。

 上海ゴム相場は、1トン=1万元の節目で辛うじてサポートされる展開になっている。7月24日の安値は、6月19日安値と同じ1万50元に達した。ただ、同水準割れは回避されたことで大きな値崩れは回避されている。

 米中貿易摩擦に関しては、何ら新しい展開がみられない。米中当局者は通商協議が行われていないとしており、米中双方がメンツをかけた我慢比べを展開している。最近の上海ゴム相場は人民元相場と連動する傾向が見受けられ、人民元相場が対ドルで安値を更新するサイクルを維持する中、上海ゴム相場の1万元の節目割れを巡る攻防が続くことになる。

 産地集荷量は安定している。サイクロンの発生を受け、ベトナムなどで洪水被害も報告されているが、ゴム生産における深刻な脅威とはなっていない。タイ中央ゴム市場の集荷量も安定している。

 7月16日にタイ政府が市況対策を検討中との報道が流れたことで産地相場には下げ一服感も広がっていたが、ここにきて改めて値下り傾向が強くなっている。RSSは1キロ=45バーツの節目を割り込み、今季最安値を更新している。市況対策に関する新たな動きなども報告されておらず、安定した集荷量を背景とした値下り圧力が強くなっている。

 7月25日には東京ゴムの7月限が納会を迎えたが、納会値は162.50円となった。6月限の163.40円を下回り、納会値としては今年最安値になっている。急落するまでの勢いはないが、減産期明け後のゴム相場の実勢価格が着実に切り下がっていることは確認できる。

 8月上旬にかけての東京ゴム相場を考えるに際しては、円相場の動向にも注目する必要性がある。金融緩和の弊害を緩和するため、日本銀行が政策調整を行う可能性が報じられている。7月30-31日の日銀金融政策会合で大規模な政策調整が決定される可能性は低いものの、早期に政策調整を行う可能性が強く示唆されると、円高圧力が円建てゴム相場を押し下げる可能性もある。

 全般的に新規手掛かりに乏しい相場環境であり、東京市場では再び売買高も低迷している。ただ、産地集荷環境の安定した状態に変化はなく、上海ゴム相場の1万元割れといった動きの有無が注目される。

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