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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴムの上昇続かず

連載 2018-06-04


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、5月22日の1㎏=202.10円をピークに、190円水準まで軟化する展開になった。上海ゴム相場が反落傾向を強めたことに加えて、為替相場が円高方向に振れる中、約2週間ぶりの安値を更新する軟調地合になっている。

 上海ゴム相場は4月から5月前半にかけて1トン=1万1,000元台で揉み合う展開が続いていたが、5月中旬には1万2,000元台に乗せ、約2カ月ぶりの高値を更新していた。しかし、その後は再び1万1,000元台のボックス相場に回帰しており、投機主導の一時的な上昇圧力だった可能性が高い情勢になっている。

 5月下旬のゴム市場においては、米中通商協議の先行き不透明感が上値圧迫要因になった可能性が指摘されている。5月17-18日に行われた2回目の協議では、中国側が米国の商品・サービス購入を増やす方針を示し、貿易戦争化回避への期待感が強くなっていた。しかし、その後はトランプ米大統領が6月中旬にも中国向けに制裁課税に踏み切る考えに変わりがないと述べるなど、米中通商関係悪化に対する警戒感がくずぶっている。6月2-4日にはロス米商務長官が訪中して3回目の協議が行われる予定になっているが、互いに追加関税を課す最悪の展開を回避する方向で調整が進むか否かが、ゴム市場においても注目されている。

 一方、産地気象環境は安定している。前週に続いてインドネシアの一部で降水量不足が報告されているが、主要生産地では週間降水量が50-100mm程度の地域が目立ち、土壌水分環境は良好である。乾季から雨季への移行が強くイメージされ、ゴムに限らず農産物の生産環境は良好との報告が目立つ。

 タイ中央ゴム市場の集荷量も徐々に増加しており、現物相場も上値が重くなっている。5月31日時点で、USSは前週の1㎏=48.80バーツに対して47.94バーツ、RSSは同52.49バーツに対して51.26バーツまで小幅下落している。ただ、産地主導で消費地相場を押し下げていくような動きまでは見られなかった。減産期から生産期への移行が進む中、季節トレンドはゴム相場に対してネガティブに機能しているが、必ずしも産地供給環境は材料視されていない。

 全般的に相場テーマの把握が難しい状況が続いているが、こうした中で注目されているのは上海ゴム相場と円相場の動向であり、特に季節トレンドに沿った形で上海ゴム相場の上値が圧迫されるか否かが焦点になろう。生産量の回復と過剰在庫を背景に一段安を打診するのか、改めて投機買いで地合を引き締めるのかが注目されている。

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