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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海 今月の最安値を更新

連載 2017-11-20


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200円の節目を挟んで揉み合う展開になった後、190円台前半まで急落した。6日、13日と月曜日の週明け直後の取引で上海ゴム相場が急伸する中、14日高値は205.50円に達した。しかし、その後は中国の指標悪化で上海ゴム相場が再び急落地合を形成したことで、東京ゴム相場もつれ安しており、6月26日以来の安値を更新している。

 上海ゴム相場は1トン=1万3,000元台と1万4,000元台を行き来する不安定な地合が続いているが、11月14~15日にかけての取引で急落し、今月の最安値を更新している。

 直接的なきっかけは、14日に発表された中国の10月鉱工業生産が前年同月比6.2%増と、前月の6.6%増から大きく下振れしたことだ。この発表直後の上海ゴム相場は特に目立った反応を見せていなかったが、欧州タイム入りしてからロンドンの非鉄金属相場が全面安の展開になったことで、上海ゴム相場も遅れて急落した格好になっている。

 上海ゴム市場では、大気汚染対策などで工場の操業規制が強化される中、鉱工業生産の落ち込みは当然との冷静な評価が優勢だった。しかし、非鉄金属市場では中国の需要期待が根強かったこともあり、同統計をきっかけに大規模な調整が入り、つれて上海ゴム相場も改めて下押しされる展開になっている。このまま再び1万3,000元の節目割れが打診されるのか、それとも6日や13日にみられたような急伸が再現されるか否かが注目されることになる。

 一方、タイではゴム相場の低迷に不満を強めたゴム農家が抗議デモを行う可能性が指摘され続けているが、13日に農家団体が農業省を訪問し、ゴム相場低迷への対応を要求している。当初は従来通りに大規模なデモが計画されていたが、軍事政権が主要メンバーを拘束するなど強硬策に打って出たことで、今回は代表団による農業省への訪問に留まった。

 農家側からは、最近のゴム相場の低迷について政策の失敗だと激しい批判が行われており、農業省側は今後も意見聴取などの会合を開くことを約束している。

 ただ、現時点ではタイ政府側に具体的な市況対策などの動きは確認できず、産地主導で安値是正を進めるような動きはみられない。今後は段階的に市況対策を巡る議論も活性化する見通しだが、実際に市況対策が導入されるとすれば、それは2018年以降の議論になろう。

 引き続き上海ゴム相場の動向のみが注目され、このまま需要環境の悪化懸念を背景に1万3,000元割れの方向に向かうか否かのみが、東京ゴム相場の方向性を決定づけよう。

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