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【インタビュー】日本ゴム工業会会長南雲忠信氏

キーワードは「技術革新」と「環境対応」

工業用品 2016-01-01


 一般社団法人日本ゴム工業会の南雲忠信会長(横浜ゴム会長兼CEO)に2016年の年頭に当り、わが国ゴム業界の現状と課題、工業会としての今後の事業活動計画などを聞いた。南雲会長は、ゴム産業の将来について「国内市場は縮小する一方なので、企業は一段とグローバル化対応を迫られるが、そのためには技術開発や環境対応が重要だ。それがないと世界で優位に立てない」と、次のように話した。
 

技術で優位に立てないとグローバル化も難しい

 ■ゴム業界の課題
 少子高齢化が進み、国内需要の低迷が続いています。働き手が減少していく中で、必要な設備投資は続けるにしても、一方では生産拠点をある程度リストラしながら、いかに生産性を上げていくかが課題になってくると思います。

 生産性とともに品質を上げることも大事です。特に工業用品は、世界的に見ると必ずしも日本は優位な立場にありません。技術開発やグローバル化では、遅れている面も多々あると思います。

 ■業界の目指す方向性
 キーワードは「技術革新」と「環境対応」と考えます。これらで優位に立てないと、グローバル化も難しいからです。世界に通用する商品を出すには、技術革新がないとできません。また、それを行うことによって国内生産が維持でき、技術が国内に残ることにもつながります。

 一方、少子高齢化が進むと、国内では新しいニーズや市場が生まれてきます。「健康・介護」「省力化・自動化」などがそうで、いずれも国内が先駆けて技術革新を必要とする分野なので先駆ければチャンスが出てきます。

 さらに「環境対応」も重要です。当会も低炭素社会の実現に向けて、廃棄物削減やCO2排出量削減、VOC削減などで成果を上げつつあります。環境負荷低減の取り組みは、世界に対する日本の競争力が強まることにつながり、さらに製品でも貢献することができます。この分野は、すでに日本企業の強みになっていると思います。技術や規格標準化なども含めて大きな課題ではありますが、わが国ゴム産業にとっても更なる強みとなることを期待しています。

 ■企業の不祥事が続く問題について
 15年は色々な業界で問題が出てきました。我々としては、こういう問題はあってはならないことだということを肝に銘じていきたいと考えています。

 データ等の偽装を行う背景には、二律背反の問題が潜んでいるような気がします。ある性能を突き詰めていくと、もう一方の性能が落ちてしまうことはよくあります。タイヤでいうと、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能の関係がまさにそうです。そうした二律背反を克服して製品化することが非常に大事であり、そのためにも技術開発を一生懸命やらないといけないと思っています。
 

IRSGでプロジェクト進行対応委員会設置へ

 ■15年のゴム業界を振り返って
 あまり明るい話題がなかったように思います。自動車の国内生産の落ち込みが続き、それに連れてゴム製品もゴム量ベースでも出荷金額でも落ちています。しかも前年割れが続くという悪い環境にあります。

 さらに為替の円安基調が続いている中で、国際経済をみると中国・アジアの停滞がヨーロッパにも連鎖し、結局米国経済だけが好調という状況になっています。

 ゴム業界も為替が円高の時、為替リスクを避けるため生産等の海外移転を進めましたが、今は逆に円安下であってもそのメリットが出てこないのが問題となっています。

 原材料も中国経済が減速しているため、天然ゴムはその影響で価格が下がっています。今も低位安定が続いていますが、一方で価格が上がらないと天然ゴムの産地も苦しく、全体にネガティブの方向になっており、今後供給がどうなるのか心配です。

 また石油・ナフサ価格も下がっており、合成ゴムがそれに連動しています。ただ、その状況が必ずしもプラスに働いていません。上がる見込みのない原材料価格に対して、ユーザーはさらに下がることを期待し待ち続けているので、さらに原材料は下がるというのが、今の状況ではないかとみています。

 一方、エネルギー価格は必ずしも下がっていません。このため製造業の中でも特に中小企業にとっては辛い状況が続いています。当会は中小企業の会員が多いので、そうした問題を共有化する必要があると考えています。

 ■日本ゴム工業会の現況
 14年4月に一般社団法人に移行して以来、新しい組織の下で各委員会活動を行っています。また重要な統計情報はホームページで詳しく提供し、専門的な研修会や時事問題講演会なども適宜開催しています。さらに会員の意識調査を実施し、会員がメリットを実感して活動することができる組織づくりに努めています。

 工業会の役割として、規格標準化活動にも力を入れています。「ゴムおよびゴム製品」のISO規格を扱うISO/TC45国内審議委員会では、日本の強みを活かした規格提案を行っています。

 今後もISOの中で、日本が中心的な役割を果たし、国際標準開発に貢献していきたいと考えています。

 ■IRSG対応委員会
 15年10月開催の幹事会で、新たにIRSG(国際ゴム研究会)対応委員会を設置したことを報告しました。IRSGはこれまで世界のゴムの需給統計業務を中心に活動してきましたが、現在ゴム産業に関する持続的発展のためのプロジェクトが進行しています。その内容が今後、ゴム製品製造企業における個々の企業活動に影響してくる可能性も考えられるため、対応を検討するための受け皿としてIRSG対応委員会を設置しました。

 同委員会は、IRSG以外でも今後、原材料全般についても幅広く対象としていく可能性もあるのではないかと考えています。特に天然ゴムの安定した確保は大事な問題であり、これまでも日本ゴム輸入協会、JATMA(日本自動車タイヤ協会)と連携して取り組んできましたが、さらに協力し合っていきたいと思います。

 またグローバル化の中で、IRSG以外の海外団体との関係についてもますます重要になってくるので、同委員会の役割が増してくるとみています。

 ■技術開発における工業会の役割
 IT技術を使うことで今後、技術開発の世界が変わってくるのではないかとみています。特にビッグデータを駆使してあらゆることを行う動きがすでに始まっていますが、そうしたIT技術を使った経営は中小企業では遅れています。それを使わないと企業格差がついてしまう懸念があります。

 具体的な話し合いも何もありませんが、当会の中にIT関連を専門に扱う委員会があってもいいのではないかと考えています。

 ■最近のトピックス
 明るい話題としては経済産業省の工業標準化表彰として、10月にISO/TC45国内審議委員会の青木正己事務局長が日本主導の国際規格発行など国際標準化へ多大な貢献を行った功績が認められて「経済産業大臣表彰」を、元ISO/TC45国内審議委員会の主査や委員として活躍された浅田泰司氏が「産業技術環境局長表彰」をそれぞれ受賞しました。

 工業標準化表彰は、当会として2010年に経済産業大臣賞を受賞して以来の受賞となりますが、14年のISOの「ローレンス・D・アイカー賞」の受賞に続くすばらしい出来事で、大変喜んでいます。ちょうどISO/TC45国内審議委員会は、16年に創設20周年という節目の年を迎えますので、二重の喜びとなりました。

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