安定供給、コストアップを懸念
ゴム業界にもコンテナの壁
会員限定 工業用品 2021-02-09
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、輸出入に使用するコンテナの確保が厳しい状況が継続している。影響は日本のゴム業界にも波及しており、製品の安定供給ができなくなるだけでなく、コストアップにも繋がるとして、その動向を懸念する声がある。
コンテナの確保を困難にしている背景には、荷役の停滞、船便の減少、コンテナ製造量の減少、中国へのコンテナ集中、中国・米国でのトラックドライバー不足など複合的要因が挙げられている。
ロックダウンなどによりヒトの動きが制限され、港湾作業員が不足したことで、荷役スピードが減少したことに加え、稼働停止を余儀なくされた工場があったことで各国の港に大量のコンテナが滞留した。一方、船会社は貨物がないまま船を動かすと損益に大きな影響を及ぼすため、便数を減らすことで価格の安定化を図っている。コンテナだけでなく、船便の確保も容易ではないという。
中国の影響も大きい。世界一のコンテナ製造量を誇る中国では、新型コロナの影響により製造量が減少。一方で新型コロナからいち早く回復した後は、中国からの輸出量が増加していることや国慶節前の駆け込み需要などで、中国にコンテナが集中している。また、中国や米国ではトラックドライバー不足によって、内陸部に輸送した後の空コンテナが港に戻ってこないという現象もあるようだ。
ゴム報知新聞の取材に対して、国土交通省・港湾局担当者は、「2020年からコンテナの確保が難しい状況が続いているのは事実で、輸出に支障が出ている。こうした状況がいつまで続くのか分からないが、金額によってはコンテナを手配できるケースもあるようだ」と語った。
コンテナが出入りする、ある倉庫事業者は、「日本国内では、1月中旬から荷動きが落ち着いているが、コンテナ不足により、ラウンドユース(輸入で使用したコンテナの荷卸し後、空になったコンテナを直接荷主企業先まで運び、輸出用コンテナとして再利用する方式)が進んでいる。一方、海外では特にベトナム、中国・華南地区でのコンテナ不足が深刻になっている。対応として、①船会社からアロケーションをもらえるよう交渉する②荷主にこの状況を喚起し、早めにブッキングオーダーをもらう③航空便などの推奨④積地・揚地の変更―などに取り組んでいる。コンテナ不足は2021年夏~秋くらいまで続くのではないかと思う」と話す。
コンテナ不足を国内のゴム業界はどう受け止めているのか。
国内タイヤメーカーに話を聞くと、「船賃も含め、中長期的に船会社と契約をしているため、現状では影響はない」、「致命的な遅延は出ていないが、例え遅延が生じたとしても、物流関係会社と協力しながら、遅延を最小限にとどめられるよう取り組みを進めている」というメーカーがある一方、「製品出荷に遅れが出ているのは事実。ユーザーと協議しながら、また、各地域の在庫を見極めながら安定供給に努めていく」、「特にアジア、欧米向けのコンテナ確保に苦慮しており、状況はひっ迫している」と話すメーカーもある。
また、工業用品メーカーからは、「地産地消を基本としているため、海外生産拠点からの輸入や国内から海外への輸出は少なく、あまり影響はない」という一方、「米国西海岸などはコンテナが滞留しているため、航空便などで部品調達するなどの対応策を講じているが、コンテナチャーター代の高騰や航空便の活用などによる輸送コストの上昇に苦慮している。ただし、顧客に対する調達遅延などは発生していない」という声も聞かれる。
コンテナ不足に対する受け止めは、展開する地域や取り組み(地産地消など)によってさまざまだ。
輸入を主体とするあるゴム原材料商社は「コンテナ不足は新型コロナに加え、2020年7月に発生した大型台風の影響などにより顕著化しており、現在も続いている。昨年12月頃は最長2カ月遅れと言われていたが、現状では2週間~10日遅れにまで戻ってきている。ただ、今年に入ってからは不足を背景に“プレミアムコンテナ価格”が打ち出されはじめており、一説にはコンテナのキープに1,000ドル程度の幅で値上げが打ち出されている」と、価格上昇の実態を明かす。
新型コロナに端を発したコンテナ不足は、スケジュールの変更や遅延(納期遅れ)といった安定供給に影響を及ぼすだけでなく、コンテナを確保できたとしてもコスト上昇により収益圧迫要因になる。ゴム製造業・商社だけでなく、あらゆる業種にとって頭の痛い問題となっている。
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