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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地堅調も、上海安を嫌気

連載 2018-03-26


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、約1ヵ月にわたる1㎏=190円台前半での保ち合いを経て、180円台中盤まで小幅値位置を切り下げる展開になった。

 天然ゴムの需給環境には、特に目新しいネガティブ材料などは見当たらなかったが、上海ゴム相場が突然に相場水準を切り下げたことが嫌気され、東京ゴム相場も連れ安している。また、為替が円高気味に推移したこともネガティブ材料視されている。

 上海ゴム相場は、1トン=1万2,000元台後半で方向性に乏しい展開が続いていたが、それが突然に1万2,000元台前半まで値位置を切り下げる展開になっている。3月上旬には1万3,000元台乗せを打診していた相場だが、それが逆に1万2,000元割れを打診する展開になっている。

 問題は、上海ゴム相場がなぜ下落しているのか、明確な理由が見当たらないことだ。トランプ米大統領の保護主義政策は資源価格全体を不安定化させているが、中国の素材市況は目立った値動きを見せておらず、上海ゴム相場のみが大きく下落する理由は見当たらない。

 ただ、東京ゴム相場としては上海ゴム相場の動向を無視することができず、連れ安しているのが現状である。もっとも、値動きの理由が把握できない投機色の強さから、積極的な売買は見送られている。3月上旬は産地主導で強含んでいた上海ゴム相場が突然に軟化したことに対しては、再び投機色が強まっていることに対して失望感が強い。

 一方で、産地相場の堅調地合は維持されている。従来であれば、上海ゴム相場が軟化すると産地相場も連れ安する傾向が目立ったが、足元では上海ゴム相場安に産地相場がつれ安することに強い抵抗を示しており、それが東京ゴム相場の下げ幅を限定している。

 東南アジアの生産地では、引き続き乾燥傾向が強く、特にタイとカンボジア、ラオス、ベトナムなどの降水量が極度に落ち込んでいる。乾季傾向が強まる中、減産圧力が強まり易くなっている。しかも、生産国は3月末が期限となる協調減産の延長議論も行われている。

 産地相場は急伸こそみられないが堅調地合を維持しており、特に上海ゴム相場が軟化する中で下げ渋っていることは、地合の改善を強く示唆している。こうした産地相場の値動きを無視して、上海ゴム相場主導でダウントレンドを形成するのか、それとも産地主導で上海ゴム相場が安値からの切り返しを見せるかが、目先の東京ゴム相場の焦点になる。投機主導で下げる上海ゴム相場と、季節要因で強含む産地相場とのパワーバランスが問われる展開が続くことになる。

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