【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、トランプ見極めで横ばい
連載 2025-01-27
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=380円を挟んで売買が交錯し、明確な方向性を打ち出せなかった。1月20日にトランプ米大統領の就任式を迎えたが、マーケット環境は総じて安定している。高いレベルの先行き不透明感を抱えながらも、投資家のリスク選好性は高く、ゴム相場は強弱評価が割れる展開になった。為替相場主導の売買も見送られている。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台中盤で方向性を欠いた。1月21日高値は1万7,765元に達し、2日以来の高値を更新した。しかし、そこから大きく買い進むような動きまではみられず、方向性が定まらなかった。
引き続き中国政府の景気刺激策への期待感が強いことはポジティブ。3月の全国人民代表大会で、積極的な景気下支え策が発表されるとの期待感は強い。一方で、トランプ米政権の始動で米中通商環境には高いレベルの先行き不透明感があり、積極的な売買は見送られている。1月28日から中国で春節(旧正月)の連休が始まる影響もあろう。
トランプ米大統領の就任式直後の動きについて、マーケットでは警戒されていたほどに大きな混乱をもたらすものではないと評価されている。就任演説では、「米国の労働者と家族を守るため、貿易制度の改革に着手する」として、「外国に関税を課す」方針を示した。しかし、実際の関税発動までは調査を行う方針も示しており、一気に世界全体と米国が貿易紛争に突入する最悪の事態は回避されている。
中国が米国で社会問題になっている違法薬物「フェンタニル」の原料を製造していることを指摘し、2月1日から10%の追加関税を課すことを検討しているとの発言はネガティブ。ただし、これは違法薬物対策を急がせるための交渉カードとの見方が強く、マーケットは高いレベルの緊張感をみせながらも、本格的なリスクオフ化は回避している。
上海ゴム以外に、鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場なども方向性を欠いており、トランプ新政権がこれからどのような動きをみせるのかを見極めるフェーズになっている。春節で現物・先物市場ともに鎮静化しやすい時期だが、トランプ大統領の発言次第で相場が乱高下するリスクを抱えている。
供給サイドの動向に対する関心は低い。東南アジアは全体的に豪雨が終息傾向にあるが、まだ通常の気象環境に移行したとまでは言えない。一方、これからウインタリング(落葉期)の減産期への移行が本格化するが、減産期を手掛かりに産地主導で値上がりするような動きはみられなかった。産地相場は、引き続き上海ゴムと連動した値動きに留まっている。
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