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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国景気対策期待で反発

連載 2025-01-20

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=380円台前半まで急反発する展開になった。年初は上海ゴム相場が急落したことが嫌気され、1月7日には351.00円まで値下がりしていた。しかし、その上海ゴム相場が安値から切り返すと押し目買い優勢の地合に転じ、2024年10月25日以来の高値を更新した。

 上海ゴム先物相場は、年初の1トン=1万7,780元から1月7日には1万6,370元まで急落していたが、その後は1万7,000元台前半まで切り返す展開になった。大きな売買材料が浮上したわけではないが、年初は景気減速懸念を織り込む形で急落し、その後は景気刺激策期待を織り込む形で反発している。同様の値動きは、鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場などでも観測されており、ゴム需給ではなく中国マクロ経済環境の評価に強く左右される投機色の強い値動きになっていることがうかがえる。

 3月の全国人民代表大会(全人代)で2025年の経済成長目標、景気下支え策の具体的な内容などが発表されるとみられているが、年初からは思惑先行の不安定な値動きが続いている。

 中国は1月28日から春節(旧正月)の連休を控えているが、ゴム相場に対する影響は限定されている。春節前の在庫手当て、春節中の工場稼働率低下などを見込んだ積極的な売買は見送られている。

 産地相場も急落が一服した後の急反発と荒れた展開になった。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、年初の1キロ=71.22バーツから1月7日の66.84バーツまで急落したが、70バーツ台中盤まで切り返している。

 産地では豪雨の報告が徐々に少なくなっているが、まだ通常の気象環境とは言い難い。積極的に天候リスクを織り込む必要性は薄れているが、天候リスクに対する警戒感は薄れている。一方、1月も中旬とあってウインタリング(落葉期)の減産シーズンに突入する地域も増えているが、季節要因で産地相場を押し上げていくような動きは鈍い。産地供給環境・見通しよりも、上海ゴム相場の値動きが重視されている。

 JPXゴム先物相場は逆サヤ(期近高・期先安)環境を維持しており、特に1月限と2月限に大きなプレミアムが加算された状態が維持されている。

 原油相場が、北半球の寒波や米国の対ロ制裁強化の動きを手掛りに約5カ月ぶりの高値を更新したが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。為替市場で急激な円安が一服したことはネガティブだが、為替主導の積極的な売買も見送られた。1月20日にトランプ米新大統領の就任式を控え、関税政策の行方が注目されたが、事前の思惑的な売買も抑制された。

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