【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、高値圏で売買が交錯する
連載 2024-12-16
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=365~380円水準で揉み合う展開になった。中国経済に対する信頼感が回復していることが下値を支えるが、急ピッチな値上がりの反動で調整売りを進める動きも強く、明確な方向性を打ち出せなかった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万9,000元台乗せで上げ一服となり、1万8,000元台後半で揉み合う展開になった。10月9日以来の高値を更新したが、1万9,000元台にコアレンジを切り上げるまでの勢いはなく、利食い売りと押し目買いが交錯する展開になった。
中国共産党は12月9日に中央政治局会議を開き、2025年の経済政策などについて協議を行った。そこでは、「より積極的な財政政策」と「適度に緩和的な金融政策」を実施していく方針が示された。従来から財政政策の活用方針は示されていたが、一段と強いトーンの文言に修正されている。また、「適度に緩和的」との金融政策スタンスは、世界同時金融危機後の2009~2010年以来のことになり、政策転換が行われることを意味する。
それだけ中国経済が厳しさを増しており、共産党の危機感が強くなっている証拠とも言える。しかし、マーケットでは2025年の積極的な政策対応に対する期待感の織り込みが優先され、銅や鉄鉱石相場などと同様にゴム相場も底固さをみせた。ただし、上海ゴム相場は11月中旬の1万7,000元台前半から一気に1万9,000元台前半まで短期間で2,000ドル幅の急伸地合を形成していたため、最近の高値圏で売買が交錯する不安定な地合になった。このため、JPXゴム相場も底固い一方で利食い売りを進める動きも強く、強弱感が交錯する不安定な地合になった。
引き続きトランプ米政権下で通商問題が深刻化するリスクが警戒されるも、マーケット全体が様子見に転じている。トランプ政権が始動した後に、実際にどのような通商施策が展開されるのかを見極めたいとのムードに傾斜している。トランプ氏は、交渉(ディール)のために敢えて無理難題を中国に突き付けているだけとの冷静な見方もあり、事前にトランプ政権のリスクをこれ以上織り込んでいく必要はないと評価されている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、12月10日時点で前週比1.8%安の1キロ=75.77バーツ。産地では季節外れの豪雨が続いている。中国南部やマレーシアなど各地で洪水発生も報告されている。しかし、ゴム相場に対して供給リスクを織り込むような動きは限定されている。JPXゴム相場も期近限月に対して大きなリスクプレミアムを加算するような動きは見られなかった。
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