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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、強弱材料交錯で横ばいに

連載 2024-10-28

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=390円を挟んで売買が交錯する展開になった。需要と供給の双方が決定打を欠く中、持ち高調整が中心の展開になった。産地相場は上値の重さが目立ったが、為替が円安に振れたこともあり、週を通じて明確な方向性を打ち出せなかった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万8,000元を挟んで売買が交錯する展開になった。中国経済に関する評価が定まらず、売買が交錯している。

 中国政府が景気下支えの方針を鮮明にしていることで、中国経済は最悪期を脱したとの見方が下値を支えている。7~9月期国内総生産(GDP)が前年同期比4.6%増にとどまったこともあり、政府の年間経済成長目標(5%前後)を達成するための景気刺激策が活発化する見通し。一方で、サプライズ感のある大規模な景気対策が打ち出される可能性は低いとみられる。このため、中国経済について極端な悲観も楽観も織り込む必要性が薄れている。非鉄金属や鉄鉱石相場なども、明確な方向性を打ち出せていない。引き続き、中国政府がどのような景気対策を打ち出すのかが注目されている。

 一方、供給サイドの評価も割れている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)では、引き続きRSS現物相場の入電はなし。しかし、10月24日時点でUSSは前週比2.7%安の1キロ=77.00バーツ、ラテックスは同4.5%安の74.00バーツ、カップランプは同0.3%安の59.20バーツなど、全体的に値下がり傾向が強くなっている。

 東南アジアでは引き続き豪雨が報告されており、洪水や地滑りなどの被害が続いている。ただし、一時期と比較すると洪水被害は緩和されており、供給環境は最悪期を脱したとの見方が出始めている。

 例年だと11月以降は降水量が減少に転じるが、8月から続く豪雨が終息に向かうかが注目されている。ただし、今冬は異常気象「ラニーニャ現象」の発生確率も高く、供給環境の評価は割れやすい。

 産地相場の値下がり傾向を重視すれば、消費地相場も値下りして然るべき環境といえる。一方で、JPX発表の生ゴム指定倉庫在庫は直近の10月10日時点で2,562トンであり、前年同期の5,235トンの半分の水準に留まっている。また、JPXゴム先物相場は期近ゾーンで急激な逆サヤ(期近高・期先安)が形成された環境にも変化はみられない。産地相場の値下がりに対して、消費地相場は下げ渋る展開が続いている。

 為替が大きく円安に振れていることは、円建てゴム相場にポジティブ。1ドル=150円突破から一時153円台に乗せ、約3カ月ぶりの円安・ドル高環境になっている。さらに円安が進むかも注目されている。

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