【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、景気リスク警戒で急反落
連載 2024-09-09
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=380.30円をピークに、340円台後半まで急反落する展開になった。8月末にかけては産地供給不安を手掛かりに上海ゴム相場が急伸地合を形成し、JPXゴム相場も約13年ぶりの高値を更新していた。しかし、9月入りしてからは中国経済の減速懸念もあって上海ゴム相場の急伸地合が息切れし、高値から30円を超える急落地合に転じた。為替が円高に振れたこともネガティブ。
上海ゴム先物相場は1トン=1万6,000元台前半まで急反落している。8月は連日の年初来高値更新となり、1万6,800元まで値位置を切り上げていた。しかし、9月入りしてからは利食い売りが優勢の展開になっている。
8月の相場急伸は産地天候不順による供給不安を材料視したものだったが、上海ゴム相場の急ピッチな上昇については過熱感が強かった。上海取引所在庫は一貫して増加しており、期近限月に対してプレミアムを加算していくような動きもみられなかった。このため投機色の強さから上値目途の設定が難しい状況になっていたが、9月入り後は株価や原油相場が急落するなどマーケット環境全体が不安定化したことで、上海ゴム相場の急伸も一服している。
中国の8月製造業PMIは、前月の49.4から49.1まで低下した。活動の拡大・縮小の分岐点である50を4カ月連続で下回り、6カ月ぶりの低水準になっている。景気減速の影響で受注が大きく落ち込んでいることに加えて、輸出も伸び悩みはじめている。政府に対して大規模な財政出動を求める声も強くなっているが、実効性のある政策対応が講じられるのかは不透明感が強い。
NY原油先物相場は1バレル=70ドルの節目を割り込み、今年最安値を更新した。銅などの非鉄金属相場も値を崩している。日経平均株価を含む世界の株価も不安定化しており、高値圏にあったゴム相場でも利食い売りが膨らみやすかった。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、9月5日時点で前週比2.7%安の1キロ=83.59バーツ。上海ゴム相場の急反落を受けて、産地相場も上げ一服となっている。
タイ気象庁からは引き続き豪雨に対する注意喚起が行われており、供給不安の緩和・解消が進んでいるとは言い難い。まだ豪雨による洪水や鉄砲水、がけ崩れなどの天候リスクは高めの状態にある。しかし、8月の産地相場高は上海ゴム相場の急伸にけん引された面もあり、上海ゴム市場の投機買い一巡後は産地相場も上げ一服となっている。投機色の強い上海ゴム相場の動向に、国際ゴム相場が一喜一憂する展開になっている。
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