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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急騰一服で調整局面に入る

連載 2024-06-10

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、5月30日の1キロ=353.40円をピークに6月4日の328.20円まで急反落した後、再び340円台まで切り返す荒れた展開になっている。産地供給不安を背景に3月21日以来の高値を更新していたが、6月入りと前後して調整局面入りしている。為替が1ドル=157円台から一時154円台までの円高・ドル安に振れたこともネガティブ。高値から最大で25.20円(7.1%)の急落になったが、330円水準では押し目買いが入っている。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万5,830元をピークに1万4,850元まで急反落した後、1万5,000元台前半をコアに揉み合う展開になった。年初来高値を更新した過熱感に加えて、中国経済に対する楽観ムードの後退を受けて、鉄鉱石や石炭、非鉄金属や原油相場などのコモディティ市場全体に調整売りが広がった値動きと連動している。

 上海期貨交易所の認証在庫は増減が繰り返されており、トレンドが定まっていない。4月26日時点の21万7,081トンに対して、5月31日時点では21万7,204トンと、過去1カ月でほとんど変動していない。5月は供給不安で相場は急伸したものの、在庫の取り崩しといった需給ひっ迫化を示すようなデータは得られていない。

 5月は東南アジアの高温傾向を手掛りに供給不安を織り込む急伸地合が形成されていたが、足元では上げ一服感が目立つ。5月は各地で最高気温が40度を超えるような動きが報告されていたが、熱波の影響がやや緩んでいる。気温が30度を大きく超えるような高温環境は維持されているが、5月と比較すると天候リスクが軽減されつつあることはネガティブ。夏に向けて改めて高温傾向が強まるのか、エルニーニョ現象の収束傾向と連動して高温が一服に向かうのか、天候リスクの有無が重視される地合が続いている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、6月6日時点で前週比2.8%安の1キロ=83.91バーツまで下落した。一時86.30バーツまで値上がりしていたが、消費地相場で調整圧力が強まる中、産地相場も上げ一服となっている。

 6月入りと前後して、コモディティ市場全体で調整売りが膨らんでいる。原油に関しては6月2日の石油輸出国機構(OPEC)プラス会合で減産縮小計画が発表された個別事情もあるが、鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場などが軒並み値を崩している。5月31日に中国の5月製造業PMIが発表されたが、前月の50.4から49.5まで低下し、活動が縮小に転じたことが示されている。中国では政策支援効果が薄れ始めた可能性が警戒されていることはネガティブ。

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