【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地の高騰一服で調整売り
連載 2024-02-12
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=270円台後半まで値下がりする展開になった。週前半は円安の支援を受けて、2月5日には2021年2月以来の高値となる290.70円まで値上がりした。しかし、その後は円安一服に加えて、上海ゴム相場と産地相場がともに軟化したことで、調整売り優勢の展開に転じた。中国の春節(旧正月)の連休を控えての在庫手当の動きが産地相場の急伸を促していたが、上げ一服となっている。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半で上値の重い展開になった。改めて中国経済の減速懸念を織り込む動きが優勢になっている。中国株は、証券監視当局の空売り規制などの株価対策の動きから反発しているが、鉄鉱石や石炭、非鉄金属などのコモディティ相場は総じて上値の重い展開になっている。上海ゴム相場も急落こそ回避されているが、上値の重さが目立つ展開になった。
国際通貨基金(IMF)の対中経済審査報告では、不動産危機と弱い外需が打撃となり、2024年の中国経済成長率は4.6%と、2023年の5.2%から鈍化する見通しが示された。また、地方債務の積み上がりにも強い懸念が表明されている。
産地相場が上げ一服となったこともネガティブ。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、2月8日時点で前週比2.8%安の1キロ=70.69バーツとなっている。年初の57.30バーツから2月5日には72.89バーツまで急伸したが、その後は3営業日続落となっている。
1月は、中国が春節の連休入りを前に在庫手当の動きを強化する中、主に需要サイドの要因で地合を引き締めていた。ウインタリング(落葉期)を迎えるも、集荷量は安定している。このため、もっぱら需要サイドの要因で値上がりしたとみられる。しかし、2月10~17日までが春節の連休になる中、産地相場の急伸が一服し、つれて消費地相場も値下がりしている。中国勢の在庫手当の動きが一巡することで、産地相場が沈静化する兆候をみせていることはネガティブ。上海ゴム相場は連休に入るが、その間に産地相場がこのまま上げ一服から調整局面入りするのか、改めて上値を切り上げる動きをみせるのかが注目される。
為替が円安・ドル高方向に振れたことも、円建てゴム相場にはポジティブ。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長などが、米経済の底固さから利下げに慎重な発言を行ったことで、米金利上昇圧力が発生したことが、円安・ドル高を促した。また、日本銀行の内田副総裁が、マイナス金利解除後に追加利上げを続けるパスに慎重な立場を示したことも、円安要因になった。
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