【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、年初は上海ゴム主導で軟化
連載 2024-01-15
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=250円台をコアにやや上値の重い展開になった。年初に急伸した上海ゴム相場が高値から急反落し、つれてJPXゴム相場も戻り売り優勢の展開になった。為替が円安に振れたことが下げ幅を限定したが、2023年12月29日の259.00円をピークに一時249.10円まで軟化している。
上海ゴム先物相場は、年初の取引で1トン=1万4,540元まで急伸し、2023年11月17日以来の高値を更新した。しかし、その後は1万3,000元台中盤まで急反落するなど、極端に不安定な地合になっている。年初の取引では、中国の習近平国家主席が年頭所感において「経済の安定実現」を強く訴えたことが好感され、鉄鉱石相場などと連動した急伸地合を形成した。しかし、その後は改めて中国経済の減速懸念を織り込む動きが強まるなど、短期投機筋主導の高ボラティリティ環境になっている。
世界銀行が2024年の世界経済の成長率が2.4%と、2023年の2.6%から低下し、3年連続で減速するとの見通しを示していることはネガティブ。2023年に各国がインフレ対策で大幅利上げに踏み切ったこともあり、成長鈍化の懸念は強い。当然、自動車タイヤ向けなどのゴム需要も伸び悩む可能性が高い状況だが、一気に需要不安を織り込むような動きはみられなかった。「景気減速懸念」と「景気対策期待」の綱引きになっており、上下双方に値が飛びやすい環境になっている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラン)のRSS現物相場は、1月11日時点で前週比1.6%高の1キロ=58.62バーツ。2023年末に向けてのじり高傾向が維持されている。需要家の引き合いの弱さも指摘されているが、雷雨が報告・予想されるなど気象環境が不安定化していることもあり産地相場は底固さをみせている。大規模な供給障害の発生などは報告されていないが、上海ゴム相場の軟化傾向に逆行する展開になっている。
能登半島地震ではゴム相場に対する直接的な影響は限定された。自動車産業の被災も報告されているが、比較的早く生産再開の動きが広がったこともあり、在庫調整での対応が可能とみられている。自動車関連株の急落といった動きもみられなかった。地震の影響で日本銀行のマイナス金利解除が難しくなったとの見方はポジティブ。
日経平均株価はバブル崩壊後の最高値を更新しているが、こうした金融市場の動向もゴム相場に対する影響は限定されている。ただし、年初からは2023年末に向けてのドル安・円高を是正する動きがみられ、1ドル=141円水準から145円台まで円安・ドル高が進行したことは円建てゴム相場の下値を支えた。
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