PAGE TOP

【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急伸地合一服で高値波乱へ

連載 2023-10-30

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は10月19日の1キロ=276.90円で上げ一服となり、その後は252~268円水準をコアに売買が交錯する荒れた展開になった。産地相場の堅調地合を受けて当限主導で急伸地合を形成していたが、上海ゴム相場が上値切り上げに抵抗をみせたことで、上げ一服となった。ただし、押し目では買いを入れる動きも強く、高値圏で波乱の展開が続いている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台中盤から後半で売買が交錯した。利食い売りと押し目買いが膨らみ、明確な方向性を打ち出せていない。上海ゴム相場も10月16日には1万4,920元まで値上がりしていたが、日本とは異なり中国国内の在庫には余剰感が強く、早めに利食い売りが先行した。ただし、そのタイミングで中国政府が景気対策に本腰を入れ始めたことで、押し目を買い拾う動きも強く、結果的には高値波乱の展開が続いている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、10月26日時点で前週比3.3%安の1キロ=57.05バーツ。東南アジアの豪雨や供給を背景に一時59.02バーツまで上昇していたが、上げ一服となっている。

 産地では依然として豪雨が続いており、気象環境は改善していない。首都バンコクを含む各地で洪水被害が発生しており、タイ気象庁の予報だとしばらくは豪雨が続く見通しになっている。しかし、消費地相場の上げ一服感が強まる中、産地相場も急伸地合が一服している。このまま産地相場が鎮静化に向かうのか、急ピッチな上昇を再開するのかが焦点になる。

 10月25日にJPXゴム先物相場の10月限が受渡日を迎えた。受渡価格は378.40円となり、9月限の238.30円から140.10円の値上がりになった。2011年5月限以来の高値になる。産地の供給不安と国内低在庫がショート・スクィーズを引き起こし、異常ともいえる値上がりになった。受渡高が9月限の335枚から104枚まで急減したことで、受け腰が強かったというよりも、渡しものが少なかった影響であることが推測される。

 ただし、新たに当限になった11月限は26日終値で258.90円であり、10月限の受渡価格にサヤ寄せするような動きはみられない。サヤ環境も安定化しており、徐々にではあるがマーケット環境が落ち着きを取り戻しつつあることが確認できる。

 中東情勢は依然として不安定であり、また米長期金利の上昇を受けて、リスク投資の地合は不安定化している。非鉄金属相場などは上値の重さが目立つが、ゴム相場に対する影響は限定されている。原油価格は明確な方向性を打ち出せていない。

関連記事

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物