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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、1カ月ぶりの安値更新

連載 2023-10-09

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=230円の節目を割り込む展開になった。230円台前半から中盤で揉み合う展開が続いていたが、リスクオフ環境の中で若干上値の重い展開になった。

 上海ゴム先物相場は国慶節の連休で取引が行われず、市場参加者の乏しさから薄商いの膠着状態に陥る場面が目立った。しかし、10月に入ってからリスクオフ圧力が株式市場からコモディティ市場にも波及し始めると、ゴム相場も上値の重さが目立ち、9月5日以来となる約1カ月ぶりの安値を更新した。

 米長期金利の上昇が続いていることが、リスクマーケット全体の地合を不安定化させている。米経済の底固さを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を「より高く、より長く」高水準に維持するとの見方が強くなっている。米長期金利は9月末に向けて4.5%を上抜いたが、10月入りしてからは一時4.9%に迫る動きをみせている。どこまで米長期金利の上昇が続くのか分からないとの不安心理が、リスク資産全体の上値を圧迫している。

 急激な米金利上昇は実体経済と金融市場の双方に強いストレスを掛けることになる。9月下旬の段階で世界的な株安傾向が強くなっていたが、10月に入ってから日経平均株価は5月18日以来の安値を更新している。また、原油や非鉄金属相場も値下がり傾向が鮮明になっている。こうした中、ゴム相場は相対的な底固さをみせているとも言えるが、徐々にリスクオフ圧力の影響を無視できなくなってきている。

 例年だと中国の国慶節中は持ち高調整中心の小動きに留まる傾向が強いが、今年はその間に強力なリスクオフ圧力が発生したことが、ゴム相場の上値を圧迫した。10月9日から上海ゴム相場の取引が再開されるが、そこでリスクオフ環境を背景に値を崩すのか、連休前の底固さを維持するのかが注目される。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)の現物相場は、10月5日時点でRSSが前週比0.6%高の1キロ=52.55バーツとなっている。消費地相場の軟化が進んでいるが、産地相場は横ばいから小幅高と底固く推移している。大きく上昇するような動きまではみられないが、引き続き豪雨や洪水被害の発生が報告されている。タイ気象庁は10月中旬に向けて豪雨が続く可能性を警告している。ただし、消費地相場では期近限月に対して大きなプレミアムを加算していくような動きは確認できなかった。

 為替市場では、米長期金利上昇でドル高・円安圧力が強まり、一時1ドル=150円の節目を突破した。円建てゴム相場に対してはポジティブな動きになる。

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